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2024-09-21

【相撲編集部が選ぶ秋場所14日目の一番】大の里、天敵退治で2度目のV。千秋楽を待たずに決める

これまで実質3連敗だった天敵・豊昇龍に廻しを与えず、一方的に押し出した大の里。千秋楽を待たず、2度目の優勝を決めた

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大の里(押し出し)豊昇龍

何度も痛い目に遭わされた右下手はもちろん、左上手も許さなかった。
 
大の里が豊昇龍をモロ手突きから一方的に押し出し。13勝1敗として、千秋楽を待たずに2度目の優勝を決めた。
 
この日の相手の豊昇龍は、数字上、対戦成績は大の里の1勝3敗となっているが、その1勝は不戦勝。実際に土俵の上では3戦3敗、しかも、いずれも右からの下手投げで投げつけられており、大の里にとっては“天敵”ともいえる相手だった。
 
豊昇龍は今場所、13日目まで7勝6敗と不調だが、これまでと同じように廻しを与えてしまっては危険だ。大の里は、とにかく立ち合いは「迷いなく思い切って」突き放していこうと決めた。
 
その作戦が、今場所調子が上がらず、やや立ち腰で当たってきた豊昇龍に見事にハマった。大の里はモロ手突きからまず右をグイッと伸ばす。続いて左の突き。さらに右で相手のノドを当たりを突くと、豊昇龍はたまらず黒房下、土俵を飛び出した。

「立ち合いと土俵際、と自分に言い聞かせて、しっかり意識してやりました。(実質3連敗の大関に勝っての優勝は)それは大きいと思います」と大の里は手応え十分の一番を振り返った。
 
苦手を撃破し、2度目の優勝を手にした。これには、「うれしいですね。先場所の反省を生かして取り組むことができた。名古屋の悔しさを反省して生かしきれたと思います」と大の里。しかも、優勝決定は千秋楽を待たずして、というのだから恐れ入る。
 
さらに恐れ入るのは、今年初場所の新入幕から、5場所で2度目の優勝だということだ。“優勝争い”ということまで話を広げると、そこに加わることができなかったのは先場所だけで、5場所中4場所、争いの中に入っている。つまり、入幕以来の“優勝争い参加率”は、実に8割に上るのだ。
 
直近1年間の優勝回数という切り取り方をしても、この優勝で、2回でトップの横綱照ノ富士に並んだ。ちなみに残りは霧島が1回、尊富士が1回。今場所の大関陣は、琴櫻は優勝経験なし、豊昇龍は最新の優勝が昨年の7月なので、この1年の優勝はゼロだ。つまり、“優勝実績”という観点で見れば、大の里はすでに、来場所番付で並ぶであろう現在の大関陣より上の位置(西の横綱級???)にいると言ってもいいわけだ。
 
新入幕からの通算成績は、これで56勝18敗。新入幕が初場所という幸運にも恵まれ、毎年九州場所になれば話題に上る年間最多勝も、ケガさえなければ可能性十分だ(現在52勝の琴櫻との争いか)。

「新入幕からの年間最多勝など前代未聞では?」とも思えるが、実は昭和35年、同じく初場所の新入幕から、のち大横綱となる大鵬が記録している。ちなみにこの年の大鵬は、3月場所に7勝8敗の負け越しが一度あり、66勝24敗、優勝は11月場所の1回で、翌年1月場所から大関になっている。まあいずれにしても、この快挙を達成できれば、大の里が“大鵬級の逸材”であることを示すことになるだけに、新大関として上がるであろう九州の土俵が、早くも楽しみになってくる。

「まだ15日間終わっていないので。しっかりあした勝って締めて、(師匠の二所ノ関親方〈元横綱稀勢の里〉に)いい報告ができるように頑張りたい」
 
大の里一色となった場所もあと一日。新大関誕生を盛り上げる意味でも、最後もビシッと締めてもらいたいところだ。

文=藤本泰祐

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