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2024-10-22

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第27回「その気持ち、分かります」その3

給金相撲で5連敗した岩木山は、千秋楽で白露山を押し出し、ようやく勝ち越した

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いやあ、その気持ち、よく分かるよ、と肩の一つも叩きたくなるような、納得がいく話でも紹介しましょうか。
勝負をしているワケですから、土俵の周りは不本意なことだらけです。
時には、ワナワナと怒り狂い、あるいは喜び過ぎて脱線することも。
でも、そうなるには、ちゃんと理由が。
そんな人間の心のひだをつまびらかにするような面白エピソードを。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

何事もほどほどに

ゲンを担ぐ力士は多い。でも、ほどほどにしないと大変なことになる。

“猛牛”と言われた先代佐渡ケ嶽親方(元横綱琴櫻)は負けると帰る道筋を変えた。あるとき、もうとっくに場所はハネたのに、なかなか部屋に戻ってこない。関係者が心配していると、こんな電話がかかってきた。なんと「帰る道がなくなってしまった」のだそうだ。

平成20(2008)年夏場所9日目、東前頭11枚目の岩木山(現関ノ戸親方)は早々と7勝目を挙げ、勝ち越しに王手をかけた。残りは6日もある。ところが、翌10日目から一転して5連敗し、なかなか勝ち越せない。岩木山が焦ったのは言うまでもない。ついに場所も今日でおしまいという千秋楽、ようやく東前頭15枚目の白露山を押し出し、待望の8勝目を挙げた岩木山は苦笑いしながら引き揚げてくるとこう言った。

「別に優勝が懸かっているワケじゃないので、そんな緊張感はありませんでしたけど、やはり慌てました。過去(平成18年夏場所)、7勝3敗から5連敗して負け越したこともありますから。ゲン担ぎ? 酒ですね。最後の3日間はもう酒におぼれそうになりましたよ。いやあ、勝ててよかった」

最後の一言には妙に実感がもこもっていた。

月刊『相撲』平成25年1月号掲載

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