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2025-01-12

【相撲編集部が選ぶ初場所初日の一番】琴櫻が丁寧に、慎重に隆の勝降す。豊昇龍とともに綱取り大関が白星発進

右差し左上手の万全の体勢を作ってから、隆の勝を寄り切る琴櫻。慎重な攻めで、まずは綱取り場所を白星発進した

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琴櫻(寄り切り)隆の勝

新しい年の初場所が始まった。
 
先場所優勝の琴櫻が綱取りに挑戦、先場所千秋楽に相星決戦を戦った豊昇龍にも、優勝できるようなら昇進の可能性が示唆されている。横綱照ノ富士も3場所ぶりに初日から出場、さらに優勝争いという意味では「ノープレッシャーの今場所はむしろ大チャンスでは?」とも思われる大の里と、横綱・大関陣4人が登場し、役者がそろっての新年のスタートとなった。
 
注目の結び4番。まず大の里が翔猿のタイミングのいい引き落としに這い、まさかの黒星スタート。波乱の空気が土俵に漂う。
 
そんな中、綱取りを目指す2大関が相次いで土俵へ。まず豊昇龍は、立ち合いすぐに上手をつかみ、相手の巻き替えを許さぬ鋭い攻め。外掛けから上手出し投げで崩して霧島を寄り切った。
 
場所前の横審稽古総見でも大関以上の中で一番の動きを見せ、好調さがうかがえた豊昇龍だが、この日も先手、先手で素早い動き。常に攻めての完勝で好発進を果たした。
 
続いては琴櫻。この日の相手の隆の勝にはこのところ6連勝しているが、立ち合いの勢いをまともに受けると危ない相手だ。
 
琴櫻は立ち合い、まずはしっかり当たっていつものようにモロ差し狙い。右の相四つとあって右はサッと入った。左は差せないとみるや上手を探ったが届かず、抱える形に。廻しが取れないまま前に出たところで、隆の勝に掬い投げでかわされ、一瞬グラリとしたが、これを残すと今度は左上手をしっかり取ってから万全の寄りで寄り切った。

「慌てずに、相手の動きに対応できて、しっかりと攻められた。(場所前に“勝負どころを間違えないように”と述べていたが、そのとおりできたか)そうですね。まだ始まったばっかりなんで、あしたも集中していくだけ」

と琴櫻。とにかくのこの日は丁寧に、慎重に白星をつかみにいったという印象を受けた。一瞬危ない場面もあったが、廻しを取れないままで勝負をつけようと体重を相手に預けてしまうことなく、大事に攻めていったことが白星につながった。「できれば横につきたかった。(琴櫻は)慌てなかったですね」と、隆の勝もその落ち着きぶりには降参だ。
 
相手を吹っ飛ばすような勝ち方ではなかったが、考えてみれば、横綱に求められるのは、むしろこの日のような「そう簡単には負けない相撲」。それができるのは、琴櫻がその地位に近づいていることの証明と言えるかもしれない。あす以降もある程度この感じで取り続けられれば綱が近づいてくるはずだが、あすは多彩な動きのある阿炎との対戦。落ち着いて取り切ることができるかは注目だ。
 
ともあれ、豊昇龍は動きのよさで、琴櫻は落ち着きで、と、両者とも持ち味を出しての好発進。まだ初日を見ただけではあるが、なんとなく、2人とも終盤まで綱取りへの興味を持たせ続けてくれそうな予感は漂うスタートとなった。
 
一方、結びで登場した照ノ富士は、若隆景の肩透かしを食い黒星。立ち合い相手の右腕を手繰ろうとしたところをしのがれて体が斜めになってしまい、右足の送りが遅れたところをすかさず決められた。下半身の動きの不安が表に出た形の内容だけに、あす以降が心配だ。果たして早い時点で本来の感覚を取り戻すことができるか。

文=藤本泰祐

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