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2025-01-15

【相撲編集部が選ぶ初場所4日目の一番】他の上位陣総崩れの中、豊昇龍が全勝守る。独走態勢に入れるか?

押し込まれながらも、力強い突き落としで隆の勝を逆転、4連勝とした豊昇龍。まだ足は俵にかかっておらず、少し余裕があったことがうかがえる

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豊昇龍(突き落とし)隆の勝

一瞬、今場所初めてヒヤリとさせた。
 
が、土俵際で力強く隆の勝を突き落とした。
 
当初、トップコンテンダーだった琴櫻が綱取りからズルズルと後退するのを尻目に、「もう一人の綱取り大関」の豊昇龍が、初日から4連勝を決めた。
 
この日は、突き押し相撲の隆の勝との激しい突き合い、押し合いになった。まずは突っ張って先手を取ったが、ちょっとイナし、二度目の攻めを見せた後に潜られかけ、これを嫌って少し距離を取ろうとしたところを一気に左の突きから右ノド輪で出られた。だがここからが豊昇龍の足腰のよさ。正面土俵に追われ、弓なりになりながらも、腰の備えは崩れなかった。俵に足が掛かる前に、左からの突き落としで、鮮やかに逆転を決めた。
 
以前は、相手に攻められながら、しぶとく投げで逆転する、というイメージがあった豊昇龍だが、先場所からは完全に相撲が変わった。聞けば「”前に出ない大関“と言われて嫌だった」とのことで、そこから突っ張りを磨いたのがきっかけとなった。
 
突っ張りの威力が増すとともに、豊昇龍は「前に出る大関」へと変身した。今場所は、効果を表し始めた先場所にも増して、突っ張りの威力が増している。以前は、突っ張りを見せても、自分の上体も立っているような形だったのが、今場所はより前傾姿勢からの突っ張りになっているように見える。3日目に体勢の低い若隆景をあっさり突き出した相撲にもそれが表れていた。さらにこの日も、「しっかり相手のことを見ながら、下から下からいきました」と本人も語っているが、前傾姿勢を保って突き合い、押し合いができていたからこそ、最後にノド輪で起こされながらも、腰を崩されるまでには至らず、「勝負どころだと思って、雑な格好になってしまった。慌てすぎました」と隆の勝を悔しがらせる突き落としを繰り出せた、と言えるだろう。
 
突っ張りの威力が増したことで攻撃力がアップし、さらにそれが持ち前の粘り腰もより生かす効果を生んでいる、まさに好循環だ。
 
この日は、大の里が阿炎に引き落とされ2敗目、琴櫻は元気なく霧島に寄り切られて3敗目、さらに照ノ富士も翔猿を捕まえきれず、最後は送り出されて2敗目と、豊昇龍以外の横綱、大関が総崩れ。早くもトップを行く豊昇龍とは星2つ以上の差がついた。
 
さらに関脇大栄翔も土俵際でかわされて王鵬との全勝対決に敗れ、豊昇龍以外の全勝はいずれも平幕の王鵬、千代翔馬、玉鷲、金峰山という情勢となった。今場所完全に覚醒したような感のある王鵬が、おそらくこの後、連続で組まれることになる横綱・大関戦でどの程度の星を残すかにもよるが、優勝争いの趨勢としては、豊昇龍の独走態勢への流れは、だんだんと大きくなりつつある。
 
綱取りのためには、今場所の優勝が条件となっている豊昇龍だが、ここまでの相撲内容のよさと、周囲の状況を勘案すれば、その可能性、どんどん膨らんできていると言っていいだろう。1つでも、2つでも他の上位陣と星の差ができることは、よしんば何かのはずみで1敗しても、まだ精神的に断崖絶壁に追い込まれずに済むことを意味するので、これも追い風となるはずだ。

「何より勝ててよかったです。最後まで一日一番、集中しながら取っていきたい」と豊昇龍。話す表情も穏やかで、気持ちの面でも、今のところいい状態にありそうだ。
 
当初は琴櫻が看板役者かと思われたが、どうやら主役交代。令和7年初場所は、豊昇龍にほかの役者がどう絡んでいくか、という場所になってきた。

文=藤本泰祐

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