close

2025-01-20

【相撲編集部が選ぶ初場所9日目の一番】金峰山がV経験者をねじ伏せ全勝キープ。いよいよあすから上位戦へ

小手投げで優勝経験者の尊富士をねじ伏せ、全勝と単独トップをキープした金峰山。いよいよあすからは上位戦。残り何敗で乗り切れるか

金峰山(小手投げ)尊富士

パワーで、スピードをしのいだ。
 
幕内でただ一人全勝を守り、きのうストレート給金を決めた金峰山が、この日は1敗で追っていた尊富士を小手投げに下し、全勝キープ。Vへの大きな関門を一つ突破した。
 
平幕同士の全勝と1敗の対決。金峰山にとっては、尊富士は平幕下位では最大の強敵であり、負ければトップに並ばれることもあって、Vへの第一の関門と言えた。
 
2人は日大の先輩・後輩の間柄で、金峰山が1学年上。学生時代は「勝ったり負けたり」だったとのことで、意識の上でどちらかが圧倒的に有利、不利ということはないはずだ。過去、プロでの対戦はないが、持ち味としては、金峰山はパワー、尊富士はスピードなので、立ち合いのスピードが生きる早い勝負なら尊富士、いったん動きが止まる相撲なら金峰山が有利か、という予測が成り立った。
 
立ち合いは互いの持ち味を出し合い、金峰山は突き、尊富士は押しを繰り出して互角。しかしその後の押し合いはやはり金峰山がパワーで勝ったようで、尊富士は思わず一度引きを見せた。
 
立ち合いからの攻めが途切れた尊富士は、動き続けるしかない。回り込みながら右で上手を探るが届かず。それでもいったん右四つ。すぐに左を巻き替え、モロ差しで攻めたが、金峰山は尊富士が左を十分に差す前に、相手の右から小手に振って、パワーでねじ伏せた。

「紙一重なんで。負けたんでまだまだという感じ。悔しいな。(モロ差しで攻めた場面は)流れでいけると思ったけど……」と尊富士。最後は独り言のように「2差つけられた」とつぶやき、悔しそうだった。
 
金峰山はこれで9連勝。単独トップを守った。先場所十両優勝して今場所が返り入幕だが、それはこのところ首を痛めて万全でなかっただけのこと。もともとは三段目100枚目格付け出しから所要8場所で入幕、その場所11勝を挙げて敢闘賞を受賞した“怪物級”の力士だ。聞けば「十両に落ちて、首の治療法についてのことなどをいろいろ考えた」といい、枕を替えたり、一時より治療の回数を増やし、マッサージやストレッチをしっかりしていることで「今は治療が合って、首は大丈夫」と体が戻ってきたことと、「親方(元幕内肥後ノ海の木瀬親方)から、“とにかく手を出していけ。それで前に落ちてもいい”と言われている」と、四つ相撲を封印して、本来の突きに徹していることがかみ合って、今場所の快進撃となっているようだ。つまり今場所の金峰山は、ここ1年半ほどくすぶっていた金峰山とは別人と言えるのだ。
 
この日を終わって、優勝争いは、全勝が金峰山、1敗が千代翔馬、2敗が王鵬と尊富士と、ここまで4人がすべて平幕、この日3敗目を喫した豊昇龍を含め、大の里、大栄翔、霧島、髙安、一山本、玉鷲、阿武剋、伯桜鵬の9人が3敗という情勢となった。
 
まずは金峰山が残り6日間を何勝何敗でいけるか、というところが、優勝ラインとも絡み、最大の焦点だ。あす10日目、金峰山は阿炎戦が組まれ(千代翔馬は霧島戦)、いよいよ上位戦が始まる。最高位は前頭6枚目で、駆け引きでは上位陣に譲るだろうが、パワーでは上位力士にも負けないものを持つ金峰山だけに、今場所の上位陣の元気のなさも考え合わせると、残り6番、上位相手に勝ち越しまではともかく、五分ぐらいの星でなら乗り切れる可能性はある程度あるようにも思う。
 
千代翔馬は相撲も読めないが、成績も全く読みづらいタイプで、大きく崩す可能性もあれば、大駆けもあり得る。現状の地力と番付から言うと、2敗以内の力士のトップは王鵬だが、場所序盤に比べるとちょっと勢いは落ち気味か。また経験値では優勝経験のある尊富士が上だが、これも前回の優勝時の勢いまではいっていない気も……。
 
3敗勢は残りほぼ全勝縛りになるので、その可能性を秘めるとすれば、豊昇龍、大の里の両大関と、三役戦がすべて終わった元大関の霧島あたりとなるが、例えば豊昇龍と大の里は対戦があるので、生き残れるとしたらどちらか一人、と、金峰山が星を崩した時には誰かが絡んでくる可能性はあるが、一人当たりの可能性はかなり小さいと言えるだろう。
 
いずれにせよ、まずは今後の金峰山の星次第。昨年3月の尊富士以来の平幕優勝の場所になる公算も結構出てきたが、さてどうなるか。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事