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2025-01-21

【相撲編集部が選ぶ初場所10日目の一番】金峰山に土。千代翔馬も敗れて差が詰まる。V争いは混戦に突入

金峰山は阿炎の突き落としにバッタリ。この一戦が混戦開始への呼び水となるのか

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阿炎(突き落とし)金峰山

勝負はアッという間だった。

湊川親方(元大関貴景勝)命名の(たぶん)「阿炎のセンサー」が発動した。きのうまで全勝街道を走っていた金峰山が立ち合い直後にバッタリ手をつき、土がついた。
 
今場所絶好調の金峰山の突きが、三役の阿炎にどこまで通用するか、注目された一番だったが、やはり三役の阿炎の突きのほうに一日の長があったようだ。

「変化が来るとは思わなかった。ガッチリ突っ込んでくると思って思い切りいった。肩に力が入りすぎて硬かった」と金峰山は言うが、これはやはり変化というより、阿炎の突きが上回った結果だろう。
 
立ち合いはともにモロ手突きを繰り出したが、その直後に勝負がつく要因は、2つあったように思う。一つには、やはり阿炎がスピードで勝ったことだ。阿炎の突きのほうが、金峰山の突きより一瞬早く相手の胸元に到達、上体を押し上げることに成功した。そしてもう一つの要因は、金峰山の突きが、身長のある阿炎の胸元を目がけたために、いつもより少し立ち腰になってしまったことだ。これも、金峰山の上体が起き、「阿炎センサー」を発動させる要因となった。
 
またこの日は、きのうまで1敗だった千代翔馬も、金峰山と同じく、今場所の上位初挑戦で、霧島に一蹴されて2敗に後退した。
 
きのうまでの2敗組の王鵬と尊富士はともに勝ち越し。9人いた3敗勢はバタバタと敗れ、豊昇龍、大の里の両大関と元大関の霧島の3人だけがさすがのサバイバル成功という結果になった。優勝争いは1日でグッと差が詰まり、有力者が絞られるとともに、それらのメンバーによる大混戦に。前を実績の少ない力士が走り、番付が上の力士が追いかける形になったため、かなり横一線に近い状態になったと言える。
 
まず、きのうまでは頭一つ出た感じだった金峰山と千代翔馬だが、ともにこの日は、“ちょっと上位とは差があるか”ということを感じされられる内容だった。きのうは、“金峰山は残り五分もあるか?”と書いたが、やはりこの2人にはまだ優勝争いの中で残りを五分、というのは難事か、と考え直さざるを得ない。金峰山本人は「5日で4回は勝つでしょう」と言っているが……。そう考えると優勝ラインが3敗、あるいは4敗まで下がってくる可能性は高く、現在の2敗、3敗の実力者の中からだれが勝ち残るか、という戦いになってくる可能性も十分だ。
 
では、現在の2敗、3敗の力士から、残り5日を全勝なり、4勝1敗なりで乗り切る可能性が高いのは誰か。ちょっと占ってみよう。
 
あすの対戦相手はすでに発表されているが、その後を予想すると、豊昇龍と大の里は直接対決が残っており、そのほかは琴櫻と若元春、そして平幕で前を走る力士、ということになる。今場所不調の琴櫻と若元春がどれぐらい意地をもって当たってくるかにもよるが、豊昇龍-大の里戦の勝者は、ある程度勝ち込んでくることも可能だ。
 
平幕上位の霧島と王鵬は、ともに対三役戦を完了。ただこの2人の直接対決は残っている。この後は平幕の成績上位者の挑戦を順々に受けていくことになるが、格上の相手がいるわけではないので、対戦相手の比較ではやや優位だ。霧島は王鵬との直接対決に勝つことが絶対条件。王鵬はその点、霧島に負けて並びなので、少しアドバンテージありだ。
 
尊富士は、豊昇龍、大の里の2大関、霧島、王鵬が未対戦なので、この全員と当たるとは限らないとはいえ、今後の対戦相手としては最もキツい。もちろん優勝経験があり、気持ちも強い力士なので、それでも勝ち抜いていく可能性はあるが、客観的には有利とはいえないか。
 
総合して考えると、王鵬が少し他の力士より前に出ているか。次いで豊昇龍-大の里戦の勝者、王鵬に勝つことを条件に霧島、そして尊富士、という順になるか。
 
まずはあす、金峰山と戦う大の里、千代翔馬と戦う豊昇龍の両大関が、番付どおりに平幕勢を引きずり降ろせるか。当初の焦点だった綱取りの興味はほぼ消えたが、優勝争いが最後までもつれることは、濃厚になってきた。

文=藤本泰祐

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