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2025-02-21

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第26回「ミステイク」その6

高砂一門会を行う料亭の予約を忘れて、平謝りだった現東関親方

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春は、うっかり、が多い季節でもあります。
そう、物忘れ、言い間違い、取り間違いなどなどです。
日々、真剣勝負の大相撲界でも、緊張のあまりでしょうか。
意外にこのうっかりが多いんです。
もっとも、こちらは季節に関係ありませんが。
そんな、いけねえ、やっちまったよ、と頭をかきたくなる失敗談を集めました。
ま、笑ってやってください。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

カトちゃん大失態
 
親方だってうっかりミスをする、という話は前回でもしましたね。これはその第2弾です。
 
令和2年は新型コロナ禍でなにもかもが中止になったが、毎年、11月の九州場所になると親方たちの一門会がいっせいに開かれ、中でも2年に1度はあちこちから熱い視線を浴びる。ここで翌年の初場所後に行われる理事選挙の一門候補が絞られることが多いからだ。親方たちにとっては、自分たちの命運を決める、大事な一門会と言っていい。
 
にもかかわらず、平成29(2017)年九州場所9日目の打ち出し後に福岡市内の料亭で開かれる予定だった高砂一門の一門会は、直前で中止になった。すでに日時も、場所も決まっていたのに、どうして流会になったのか。
 
理由は実にあっけないものだった。その年の一門会担当だったカトちゃんこと振分親方(元小結高見盛、現東関親方)がついうっかりし、会場の料亭に予約を入れるのを忘れてしまったのだ。そうとは知らない一門の親方たちは三々五々、料亭前に集まったものの、たまたまこの日は満席で入店できない。

「事前に予約さえ、していただいておればなんとかしたんですが、どうしようもありません。親方たちはお互いに顔を見合わせて苦笑いし、引き揚げていかれました」
 
と料亭の担当者は気の毒そうに話していた。その中に、ひと際、肩を落とし、きまり悪そうな顔をしていた振分親方がいた。
 
というのも、この年の一門会は3カ月後に迫った理事選挙に向けて大事な話し合いが行われることになっていたのだ。このときの理事選挙は貴乃花親方が周囲の反対を振り切って立候補し、わずか2票しか得票できずに落選し、大騒ぎになっている。きっと記憶している人も多いはず。高砂一門も、八角理事長(元横綱北勝海)を擁するだけに影響は少なくなく、世間の関心も高かった。
 
結局、このお流れになった一門会は翌年初場所10日目に都内で、今度は無事に開かれた。冒頭、親方たちに2カ月前のミスを詫びた振分親方は、

「頭を下げて謝罪しました。みんな、笑っていました。私の不注意であり、今後二度とないように気を付けます」
 
とまだ小さくなっていた。
 
月刊『相撲』令和3年5月号掲載

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