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2020-04-13

【System of Arthur Lydiard Vol.8】リディアード・トレーニング③待ちに待った!インターバル(無酸素トレ)



スピード練習ではない!

 リディアード方式では、「インターバル」と「スピード練習」は異口同音ではありません。インターバルは、あくまでも「無酸素能力発達トレーニング」として捉えています。

 一方、インターバルのペースを気にして、本番のレースペース、あるいはレースよりも速いペースで走らなければいけない。そのような強迫観念にとらわれている人がとても多いのが事実ではないでしょうか。

 アーサー・リディアードは、実はインターバルの「ペース」をまったく気にしていませんでした。「無酸素に入るレベルのスピード(LTからVO2Maxペース※連載第●回参照)で、『もう十分』と感じるまで行うこと」が、彼の定義するインターバルなのです。

 ヒル・トレーニングもそうでしたが、とても曖昧に感じられるかもしれません。しかし、そのトレーニングの「趣旨」を理解し、数字にとらわれるのではなく、自らの感覚と反応に耳を傾ければ、各々にとっての「正しい練習」というものが見えてくるのです。

 リディアードが好んだインターバルの距離は、「ここからあの電信柱まで」とか、「この公園1周」など。そしてペースと内容は、「ハーハーゼィゼィの入り口に足の指をつける程度のスピードで走り、そこからジョグでスタート地点まで戻る」というもの。量については「もう十分と感じるまで繰り返すこと」でした。

 速く走る目安は、1分から4分。距離にして300mから1㎞が適切でしょう。ジョグも含めた合計時間は、30分から45~60分あたり。最初の数本から速く走り過ぎたり、キツくしようとやせ我慢して回復ジョグを短くしたりしていると、大切な「ボリューム」が欠けてしまいます。

 速いペースによる酸性化を全身に巡らせ、無酸素状態に体を慣れさせるためには「ボリューム」が必要です。ところが、ペースが速過ぎたり、休息が中途半端だったりすると、脚の酸性化が早く起こり過ぎてしまいます。そして体全体に酸性化が行き渡る前に、練習そのものをストップせざるを得ない状態に陥ります。

2016年、米国ボルダー合宿で、インターバルに励む渋井陽子(最後尾)ら三井住友海上の女子選手たち

 だからといって、「量」が多ければ良い、というものでもありません。リディアードが一番注意していたことは「絶対に『もう1本』をしないこと!」でした。「1本多く」ではなく、「1本少なめに」が理想です。

 無理は禁物、腹八分目。同じペースで走ろうとしてフォームがバラバラになってきたり、肩がつりあがってきたり、首に「力み筋」が出てきたら(わかりますよね?!)、そこが潮時となります。

 わかりやすい数字でいうと、同じ距離をジョグした時点で心拍数が120~140以下に戻らない場合、有無を言わずにそこで練習をやめるべきです。逆に、ペースがゆっくり過ぎてハーハーゼィゼィさえしない場合はいくらでもできてしまいますが、これもまたインターバルの趣旨から大きく逸脱した練習ということになります。

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