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2025-02-28

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第27回「誕生日」その1

平成28年4月6日、30歳の誕生日を迎えた豪栄道がケーキを手にニッコリ

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誰でもあるもの、それが誕生日です。
キリストの誕生日は12月25日、クリスマスですね。
では、お釈迦さまの誕生日は? 4月8日です。
令和3年はコロナ禍で低調でしたが、いわゆる花まつりです。
力士たちにも、もちろん、誕生日があります。
でも、おめでとう、と祝福され、ただケーキを食べてうれしがっているのはまだ子どもです。
この日だけはさまざま思いを巡らし、新たな目標に向かって心を新たにする。
それが大人ってものです。
力士たちも誕生日にはいろいろなコメント、反応を残しています。
そんな勝負師ならではの誕生日コメントを集めてみました。
おもしろいですよ。

誕生日の誓い

男子たるもの、30(歳)にして立つ、と孔子さまもおっしゃっている。立つ、とは他人に頼らず、独立してやっていかなければいけない、という意味です。
 
平成28(2016)年4月6日、大関になって3年目の豪栄道(現武隈親方)も節目の30歳の誕生日を迎えた。ちょうど春巡業の真っ盛りで、この日は愛知県の岡崎市巡業だった。差し入れられたバースデーケーキを前に取材に応じた豪栄道は、喜び半分、気合半分の顔で、

「昔は30歳というと、オッサンやなと思ったけど、自分がなってみたら、なんてことはない。まだまだ強くなると思っている。いい治療をしたり、ちゃんとしたものを食べたり、自分の体にしっかり投資してね」
 
と苦笑いし、新たな目標を問われると、

「そりゃ、やっぱり優勝ですよ」
 
と答えている。
 
30歳になって、まだまだ若造、伸び盛り、と確認したのだ。願えば叶う、というが、豪栄道がこの目標を達成したのは半年後の秋場所のことだった。初日から千秋楽まできれいに白星を並べ、初優勝を全勝で飾ったのだ。このときのフィーバーぶりはたいへんなもので、日本中が湧き返った。
 
ちなみに、この初めて賜盃を抱いた千秋楽の夜、さぞや豪栄道の夜のメニューは豪華を極めたのではと思ったら、意外や意外。後日、豪栄道は次のように明かしている。

「あの晩は、NHKのサンデースポーツなど、テレビ出演が相次ぎ、部屋に戻ってきたのは午後11時半。そこから(酒を)飲む元気はない。大好きな焼肉を食いに行く余裕もなくってね。付け人と2人、ラーメンを食って寝ましたわ」
 
現実は厳しい。

月刊『相撲』令和3年6月号掲載

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