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2025-03-12

【相撲編集部が選ぶ春場所4日目の一番】大の里、若元春に押し出され土。早くも三役以上の全勝消える

3日目までは安定した相撲で白星を重ねていた大の里だが、この日はこれまでの対戦と立ち合いを変えて若元春に敗れた。優勝争いはこのまま混戦になっていくのか……

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若元春(押し出し)大の里

落とし穴は、4日目に待っていた。
 
きのうまで、横綱・大関陣ではただ一人、すべて白星を並べてきていた大の里が、若元春に押し出され、今場所初黒星を喫した。
 
結果的にその大きな要因となったのが、立ち合いだ。この日の相手の若元春とは、過去5回の対戦があり、大の里の4勝1敗。立ち合いはこれまですべて、まず突いて相手を起こしに出ており、特にそれで悪い結果も招いていないことから、今場所も立ち合いは突きを選択するかと思われた。
 
しかし、この日の大の里は、心境の変化があったのか、裏をかきにいったのか、あるいは仕切りの中で何か感じるものがあったのか、突きにいかず、右を固めて当たっていく立ち合いを選択した。
 
この立ち合いは、「モロ手で来るかと思ったら右を差しにきましたね。突いてこなかったので、読みが外れました」と、若元春を驚かせたが、結果的にはこれによって、「モロ手を外して左を差しにいきたかった」という考えの若元春の動きがいい攻めにつながるのだから、本当に相撲というのは一瞬のうちにさまざまなアヤが交錯するもののようだ。
 
相手のモロ手を外しにいったという若元春の左は、下(外)から当たる形となったが、まず立ち合い直後は廻しにはかからず。しかし左肩がいい角度で当たる結果になったためか、大の里は右手を伸ばせず、もちろん差せもせず、中途半端にはじくだけのような形になってしまった。
 
この大の里の右ヒジに、下(外)から来た若元春の左がピタッとハマる。若元春が左おっつけからそのまま自分の右方向に突くと、右足が前に出た大の里は横を向くような形になってしまった。
 
これで主導権は若元春。続いて右からノド輪での攻め。大の里は何とかこれをはね上げて押して出るが、若元春は右手で押して距離を作ると得意の左を差し込んだ。そのあとは右は廻しを取りに行かずにハズで押して押し出し。全勝できていた大関に土をつけた。
 
きのうまでは危なげない相撲で白星を重ね、その内容の良さから、“むしろ横綱の豊昇龍よりVに近い位置にいるのでは?”とも思われた大の里だが、予想外に早い時点で連勝がストップ、また豊昇龍と並びの位置から、優勝争いをリスタートという形になった。
 
この日は大の里のほか阿炎も敗れて早くも三役以上の全勝が消え、平幕の遠藤と阿武剋が4連勝でトップを走るという展開に。優勝争いは混戦の様相を呈してきたが、阿武剋が着々と力をつけてきた感じがあるとはいえ、全勝2人はいずれも平幕の中位、下位の力士ではあるので、まだ優勝争いの主導権は上位陣にあるとみるのが妥当だろう。
 
ちなみに1敗組の顔ぶれは、豊昇龍、大の里、霧島、阿炎、若元春、髙安、宇良、玉鷲、伯桜鵬、獅司、美ノ海、朝紅龍、時疾風の13人。最終的にはやはり豊昇龍と大の里の争いに収れんしていく可能性が高いとみるが、地力から行くと霧島、若元春あたりが割って入る可能性も十分。平幕では伯桜鵬が面白い存在か。
 
あす5日目は全勝の2人も、阿武剋が獅司、遠藤が伯桜鵬と好調力士と対戦するだけに、その結果次第ではさらなる混戦模様で中盤戦突入となる可能性も。荒れる春の土俵から抜け出してくるのは、果たして誰になるだろうか。

文=藤本泰祐

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