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2025-04-04

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第27回「誕生日」その4

令和3年7月、名古屋場所で進退を懸けた白鵬

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誰でもあるもの、それが誕生日です。
キリストの誕生日は12月25日、クリスマスですね。
では、お釈迦さまの誕生日は? 4月8日です。
令和3年はコロナ禍で低調でしたが、いわゆる花まつりです。
力士たちにも、もちろん、誕生日があります。
でも、おめでとう、と祝福され、ただケーキを食べてうれしがっているのはまだ子どもです。
この日だけはさまざま思いを巡らし、新たな目標に向かって心を新たにする。
それが大人ってものです。
力士たちも誕生日にはいろいろなコメント、反応を残しています。
そんな勝負師ならではの誕生日コメントを集めてみました。
おもしろいですよ。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

宿命と受け入れて
 
3月11日は東日本大震災の日だ。誕生日が、この日本中が震災で亡くなった2万2千人余の犠牲者の冥福を祈る日と重なってしまったのが横綱白鵬だ。
 
震度7を記録した大地震が東北地方を襲った平成23(2011)年3月11日は、白鵬の26歳の誕生日だった。それから6年後の平成29年3月11日、32歳になった白鵬は、

「(大震災が起こった)当時は、3月11日ではなく、1日早い3月10日に誕生日を変えようと思ったけど、いまとなってはこの日に生まれたのは宿命と思っている」
 
と話している。また、32歳になったことについては、

「無理をすれば、どこかを痛めるようになってきた」
 
と体の衰えを訴え、次のような対処法を披露している。

「もう昔に戻ることはできない。野球にたとえれば、150キロの速球を投げる投手が肩を壊したとするでしょう。すると、もう同じようには投げられない。そのときに合った投げ方に変えないと。右がダメなら左、上がダメなら下、というようにね。力士もそうやって工夫し、変えていかないと」
 
白鵬がすごいのは、その努力を欠かさず、しかもしっかり結果を出し続けていることだ。この32歳のときも、ケガで3場所も休場しながら、フル出場した3場所はいずれも優勝している。
 
令和3年の誕生日は春場所初日の3日前で、白鵬は4場所ぶりに土俵に上がった。昭和33(1958)年に年6場所になって以降、36歳になっても現役の横綱は、千代の富士の35歳11カ月を抜いて最高齢だ。
 
初場所の覇者、大栄翔を一気に寄り倒して29日ぶりに白星をあげた白鵬は、残念ながら取材には応じなかったが、場所前に、

「この1年で一気に年を取った。ケガは治らないし、(回復も)遅い。なんといっても(初場所前に)コロナになったのはショックだった」
 
とこぼしている。
 
令和3年名古屋場所には進退を掛けて出場。土俵際に追い詰められた大横綱がどんな闘いを見せるか注目されたが、15戦全勝で45回目の優勝を成し遂げた。

月刊『相撲』令和3年6月号掲載

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