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2025-05-12

【相撲編集部が選ぶ夏場所2日目の一番】豊昇龍、この日も厳しい横綱相撲。大の里の「十分条件」へ、やはり最大の壁はこの男⁉

若元春の土俵際の小手投げにも動じず寄り倒し、初日に続いて厳しい相撲で白星を挙げた豊昇龍。あすの王鵬戦を抜ければ優勝争いへの軌道が見えてくる

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豊昇龍(寄り倒し)若元春

立ってすぐにモロ差し、一気の攻め。相手が土俵際で打った窮余の策の小手投げにも、一瞬上体が傾いたのみで、下半身は崩されることなく、そのまま寄り倒した。
 
横綱豊昇龍が、初日に続いて厳しい相撲で連勝だ。きのう若隆景、きょうは若元春と実力者の兄弟を連破。しかもいずれもが危なげのない横綱相撲だ。
 
この日の相手の若元春は、直近の対戦成績で豊昇龍が9連勝中と相性がよく、かつ稽古もよくしていて勝手知ったる相手ではあるが、連勝の中には逆転の首投げなどもあり、もちろん油断のできない存在ではあった。
 
とはいえ、この日の内容はほぼ豊昇龍が頭で描いていた通りだった。まず左から張り差し。右で若元春得意の左差しを封じて差し勝った。すぐに左も入ってモロ差し。「最初からモロ差しを考えていた。思い通りの相撲が取れた」と豊昇龍。一瞬相手に左の廻しを与えかけたが、「特にその辺は意識せず、自分の形になったんで、最後までその形で」と、そのまま一気に出た。若元春は土俵際、左から小手投げにきたが、「まだ勝負が終わってなかったんで。最後まで集中して」と冷静さを見せ、そのまま寄り倒した。

「横綱の踏み込みが速かった。自分の脇が甘くて入られてしまった。慌てて左上手を取りにいったのがよくなかった。落ち着いていけばよかったのに、焦って小手投げにいってしまったので、体を預けられたのかなと思います」とは敗れた若元春。ちょっとこの日の横綱の内容では、付け入るスキはなかっただろう。
 
新横綱だった先場所は、右ヒジを痛めるなどして途中休場し、5勝5敗5休に終わった豊昇龍だが、今のところその右ヒジにはサポーターなどもなく、不安は感じられない。場所前の稽古でも、横綱・大関の3人の中では最も状態の良さを感じさせており、大の里の綱取りが最大の焦点になっているこの場所において、その「十分条件」である優勝を果たすための最大の壁は、まあ当たり前と言えば当たり前だが、やはりこの横綱であるのは間違いのないところだ。
 
印象的だったのは、取組後の囲み取材で「落ち着いていると同時に気合も入っているのでは?」と問われた時の答えだ。

「ちゃんと稽古してるからね。やることをしっかりやっているので」。その言葉からは、“ほかの力士には負けないはず”という自信と、同時に現状、申し分のないバランスを保った精神状態で戦えていることがにじみ出ていた。
 
この日は大の里も先場所の優勝決定戦の相手の髙安に、本割では初めて勝って連勝。二人のマッチレースとなっていく予感はさらに高まったが、大の里は叩いての白星なので、2日間の内容では、少し豊昇龍のほうが上を行っていると言えようか。
 
ただ、豊昇龍もまだ今場所の好スタートが保証されているわけではない。あすは王鵬が挑戦してくるからだ。王鵬は今場所、初日には琴櫻を破り、この日も霧島を左の突きで圧倒して突き出しと好調。気持ちの上でも豊昇龍とは同学年なので気後れはなく、豊昇龍にとって、序盤戦で最も警戒すべき相手であることは間違いがない。
 
大の里もあすは対戦成績で3連敗したことのある阿炎との対戦と、まだまだ予断は許さない。横綱と綱取り大関のマッチレースのムードが確かなものとなるのか、あるいは崩れるのか、あすは一つの序盤のヤマ場と言えそうだ。

文=藤本泰祐

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