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2025-03-21

【相撲編集部が選ぶ春場所13日目の一番】大の里3敗目! 3敗だった3人も敗れ、髙安が初Vへ前進

大の里は引いたところをついてこられて王鵬に敗れ、3敗目。V本命の位置を手放すことになり、髙安の初優勝が現実味を帯びてきた

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王鵬(押し出し)大の里

風が、髙安に吹いてきた。
 
2敗が大の里と髙安、3敗が尊富士、玉鷲、安青錦の3人という形で迎えた13日目。結果から言ってしまうと、5人の中で勝ったのは髙安だけだった。つまりこの日は、優勝争いは髙安にとってベストな形で推移することになったわけだ。
 
中入り後の土俵。まず玉鷲が土俵際の粘りに執念を見せたが軍配差し違えで美ノ海に苦杯。髙安は徹底的に突いて若元春を突き出し、2敗を守った。

そして結び3番。安青錦は大栄翔に突き起こされ、頭を下げようとしたところを叩き込まれて黒星。尊富士は立ち合い右おっつけにいかずに上手を取りにいったのが失敗だったか、圧力不足で琴櫻に叩き込まれた。琴櫻はこれでカド番脱出。
 
結びは大の里だ。この日の相手の王鵬には、4度目の対戦となった先場所、右上手を取って出たところをうまくかわされ敗れているが、王鵬は今場所はすでに負け越しと調子が上がっていないことから、波乱の可能性は低いかと思われた。
 
しかし、前への圧力がある相手はやはり怖かった。大の里は、いつもの王鵬戦と同じように、右を差しにいく立ち合い。今まではそれで立ち合い圧力負けしたことは一度もなかったが、今場所は違った。王鵬に突き上げられ、上体を起こされてしまったのだ。
 
大の里はある程度以上上体が起こされてしまうと、なかなかそこからもう一度腰を落として攻め直すことができないというところがあり、引きに走ってしまうことになる。この日もそれで防戦一方になり、そのまま王鵬に押し出された。

「やられたっすね。後半戦でもありますし、思うように体が動かない中で気持ちだと思っていたけど、消極的になってしまった。(優勝争いは)気にしないです。あと2日、集中して頑張ります」と大の里。これでまたV本命の座を降りることになり、一歩後退した。髙安との直接対決が終わっている1差の2番手の立場となり、あとはどこまで集中力を保っていけるか。場所後半に入って、いい日と悪い日がはっきり出ている(立ち合い直後に上体が起こされるかどうかがそのバロメーター)のがちょっと気がかり。
 
さてこれで、13日目を終わり、2敗で髙安がまた単独トップ、3敗に大の里、4敗に大栄翔、尊富士、玉鷲、美ノ海、安青錦、時疾風という情勢になった。ただ残りは2日しかないので、4敗組はかなり厳しく、髙安の初Vはいよいよ可能性を濃くしてきたといっていいだろう。
 
あす14日目の対戦相手は、ちょっと意外だったが、尊富士でも阿炎でもなく美ノ海となった。
 
美ノ海が勝機を得るとすれば、髙安の突っ張りをかわして前ミツに手を掛け、出し投げで崩して頭をつけての寄り、というプランになるはずなので、髙安としてはそれを許さないためにはどうするか、ということになる。となると、この日の若元春戦のようにあくまで突き切るつもりでいくか、突いて起こしてからがっぷりにつかまえにいくか、あるいは最初から捕まえにいくか、の作戦選択を迫られるが、このあたりの塩梅はなかなか難しく、そういう意味では勝手の分からない初顔の美ノ海は髙安にとって意外に嫌な相手かもしれない。
 
とはいえ、落ち着いて取れさえすれば、今の髙安なら優位は間違いないところ。10日目の単独トップは1日で手放したが、今度は死守していきたい。
 
多くの相撲ファンが待つ「そのとき」がいよいよやってくるのか。あと、もう少しだ。

文=藤本泰祐

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