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2025-05-18

【相撲編集部が選ぶ夏場所8日目の一番】大の里、ストレート給金決め全勝ターン。伯桜鵬敗れ、V争いでも単独トップに。

平戸海をしっかりと正面に置きながら押し出しで退けた大の里。全勝ターンを決めた。あと7番、最高位へ向けて一つひとつ白星を重ねていくだけだ

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大の里(押し出し)平戸海

もはや中身は“横綱相撲”だ。
 
綱取り大関の大の里が、以前には連敗したこともある平戸海を、何もさせずに押し出し。初日からの連勝を8と伸ばし、ストレートでの勝ち越しを決めて、場所を折り返した。
 
大の里と言えば、その立ち合いは、いつもは右差し狙いかモロ手突きかのほぼ二択だが、この日はちょっと違う雰囲気の立ち合いを見せた。一応右差し狙いは右差し狙いだが、やみくもに当たるのではなく、少し様子を見るようにしながら、しかもしっかりと当たり、同時に左からも相手を挟みつけにいく、という感じで立った。
 
かつては連敗したことがあるが、平戸海は体の大きさではかなりの差がある力士。落ち着いて正面に置き、ちゃんと圧力を掛けていけばいいはず、という、しっかりした計算がその立ち合いには垣間見えた。

結果的に、相手得意の左前ミツも、下へもぐることも、横への動きも、すべてを許さず。そのあとはモロ手ではなく右、左と片手ずつ突いて、「しっかり当たろうとしたけど、当たっていけなかった。そこで引いてしまったので……」という平戸海を一方的に正面土俵に押し出した。

「(廻しにこだわらず)細かいことは気にせずいきました。相手がしっかり見えていたんで、よかったと思います」と大の里。負け知らずでの全勝ターンと、これ以上ない形で綱取り場所を折り返した。
 
今場所は、立ち合いモロ手突きを繰り出したのは初日のみで、基本的には右差し狙いの立ち合いが多いが、腰を低く、上体をそらないように当たれているため、その後の相手の突き起こしにも耐えることができている姿が目立つ。そのため、結果的に叩きで勝った相撲も2番あるが、これまでに比べると、上体を起こされて慌てて呼び込むように引く、という形にはなっておらず、それも白星が続くことに結び付いているようだ。
 
この日は全勝で並走していた伯桜鵬が明生に敗れて土。大の里はついに優勝争いで単独トップに立ち、1敗で小結若隆景、平幕の伯桜鵬、安青錦が続くという形になった。大の里は1敗の3人とはまだ対戦しておらず、今後直接対決がある場合、敗れれば追いつかれる状況ではある。若隆景には過去に連敗したことがあり、伯桜鵬と安青錦は勝手の分からない初顔合わせと、直接対決となった場合に嫌な相手ではあるが、ただ1敗の3人にとっても、後半戦のつぶし合いを勝ち抜いていくことは相当な難事であるはずで、やはり優勝争いが大の里絶対有利な状況であるのは間違いがない。

大の里にとっては、横綱の豊昇龍との2差をしっかり守りつつ、目の前の敵を一人ずつ倒していけば、夢の「デビューから所要13場所での横綱昇進」を手にできる状況は整っている。あとはどの時点で優勝を意識するか、というところだろう。

「まだ半分あるし、目の前の一番一番に集中してまたあしたから」と大の里。“まるで横綱相撲”ではなく、ホンモノの“横綱相撲”を見せることができる日は、一日一日近づいている。

文=藤本泰祐

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