回り込みながらの突き落としで伯桜鵬を転がし、11勝目を挙げた霧島。来場所は大関復 帰を懸ける場所になりそうだ
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霧島(突き落とし)伯桜鵬
取組後にちょっと首をひねったように見えたのは、「左四つになった割には、攻められちゃったな」ということだったのだろうか。
それでも、しっかり白星は手にした。霧島が、伯桜鵬を右上手から捻りながらの左突き落としで降し、11勝目を挙げた。
この日の相手の伯桜鵬とは初顔合わせ。ただ伯桜鵬は、今場所初日から7連勝するなど飛び出し、上位戦が組まれているものの、8日目に痛めたのか、後半は右ヒジにサポーターが見られるようになり、やや調子を落としていた。左の相四つだけに、霧島としては、“慌てず取れれば大丈夫”という相手であったかもしれない。
立ち合いは頭を下げて左差し狙い。突いてきた伯桜鵬に少し押されたが、左をハズにあてがってイナし、この勢いを削ぐと、左四つに組み止め右上手、相手には上手を与えない体勢をつくった。ただ上手が一枚廻しだったため、霧島は無理に攻めずに相手の動きを待つ形に。伯桜鵬は、右を巻き替えにきて、浅く差しながら強引に前進。霧島は俵に足が掛かったが、左に回りながら、上手捻りと突き落としの合わせ技で伯桜鵬を転がした。
「落ち着いて、変なことをやらずに我慢した。それがよかった。負けないと思ってちゃんと腰を下ろした。早く攻めたかったけど、力がなかった」と霧島。これで11勝目。先場所は8勝に終わっているとはいえ、あすの髙安戦にも勝って12勝とすれば、直近2場所を三役で20勝ということになるので、来場所は大関復帰を狙う場所にできそうだ。この日、東関脇の大栄翔は大の里に敗れて5敗目。あす琴櫻に勝って10勝としたとしても、直近2場所は19勝ということになるので、星数の上では、次期大関争いのトップ走者は、この日の時点では入れ替わったということができる(あすの結果次第ではまた並びになる可能性もあるが)。
12日目に横綱豊昇龍を上手投げに破るなど、今場所の霧島は完全に復調気配。一時は首を痛めて低迷していたが、本人も「最近あまり自分の立ち合いができないところがあったが、よくなっている」と手ごたえを感じており、今場所は頭を下げて当たっていく立ち合いや、頭をつける相撲も多く見られる。それについても、「今のところ全然問題ない」と語っており、大関にいたころの相撲を取り戻す日も遠くはなさそうだ。
話はちょっとそれるが、今場所、この霧島と大の里の対戦が、終盤の「割崩し」によって組まれなかったのは、何とも残念なところ。最近、ほぼ毎場所、終盤に「割崩し」が行われ、常態化しているのは何とかならないかと思う。これはおそらく、最近は初日からずっと、ギリギリまで三役同士の取組を1日1番しか組まず、終盤の三役の対戦予定を三役戦でパツパツな状態にするような組み方をしていることが原因だ。例えば7日目、8日目あたりに三役同士の取組を複数組み、場所の後半に入ってからも三役陣が優勝を争う平幕の挑戦を受けられる余裕を少し残しておけば、割崩しなどほとんどしなくて済むようになると思うのだが……。
話を戻そう。大の里の横綱昇進が確定的になったことで、来場所は大関が琴櫻一人に。一つ大関のイスが空くことになるので、状況としては、巷間言われる「直近3場所33勝」まで届かなくとも大関への道が開ける可能性は高まると考えられる。この霧島と、大栄翔の両関脇には大チャンスということになるが、星数の上では、現在小結の若隆景も、直近2場所の成績ではそん色がない。最近は大関陥落者以外で、過去の「張出」に当たる関脇が作られる例は少ないが、若隆景もあす勝って関脇復帰の可能性を広げ、割って入りたいところだ。
3人はそろって30歳前後。ゆっくりしていると、尊富士、阿武剋、伯桜鵬、安青錦、さらには草野と、次世代が迫ってくるのは目に見えているだけに、このチャンスは何としてもモノにしたいだろう。来場所の大関争いは、相当アツいものになりそうだ。
文=藤本泰祐