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2020-07-01

ベテラン指導者に聞く 子供の将来を見据えたテクニック指導とは?

失敗を積み上げた先に成功はある

――テクニックの習得に関して、ヨーロッパで主流となっている考え方は「実戦形式の中で身につけること」ですが、それについてはどう思いますか?

川島 まったく同感です。最高の練習はゲーム(試合)だと思うので、ゲーム形式の練習をたくさんやるべきでしょう。グリッドのサイズ、人数、相手の強度を変えながらゲームをすることが、実戦的なテクニックを身につけるやり方だと思います。

 ただ、歴史を含めたヨーロッパの環境と日本の環境や文化を比べたときに、彼らとまったく同じことをして、果たして成果が出るのかという疑問を感じます。ヨーロッパをベースとして考えるのであれば、それに対して新しい工夫をすることが大切で、その味付けの仕方は指導者によって変わるのではないかと思います。

――日本人に合った指導方法を見つけなければいけないということでしょうか?

川島 そう感じます。仮に私がスペインに行って、JSC CHIBAで普段やっているコーンドリブルのトレーニングを行なっても、成果は出ないと思います。日本の子供たちとスペインの子供たちとでは、特性や気質が違うからです。

 私が中国で指導をしていたときに、スペイン人コーチと話をする機会がありました。彼は中国のクラブで指導するスペイン人なのですが、「中国人の子供にドリブルを教えるのは大賛成」と言っていました。一方で、「スペイン人にドリブルだけを教えるスクールをやっても意味がないだろう」とも話していました。

――なぜ、彼はそう考えたのでしょうか?

川島 スペインでは、子供の頃から、ミニゲームでドリブル技術を身につけるそうです。「だから、クラブに入るような子は、全員がある程度のドリブルができる」と言っていました。でも、中国ではミニゲームでドリブル技術を身につける環境も文化もないので、ドリブルのやり方を教える必要があります。「中国の子供はテクニックの身につけ方を知らないし、やり方も分からないので、ドリブルトレーニングのスクールは有効だ」と話していました。

 日本はスペインと中国のちょうど中間のレベルにあります。スペインほど、子供がミニゲームを行なう環境が少ないのであれば、ドリブル練習の効果は大きいと考えています。


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