close

2025-07-19

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所7日目の一番】御嶽海が敗れて全勝が消え、髙安との1敗対決を制した霧島ら6人がトップ並走

元大関同士の1敗対決で髙安を叩き込み、優勝争いのトップに並んだ霧島。大の里の対抗馬として、そして大関復帰のためにも、場所終盤まで踏ん張っていきたいところだ

全ての画像を見る
霧島(叩き込み)髙安

まだ前半戦の7日目を終えたところなので、例えて言うなら、今回の参院選で増えたと話題の期日前投票みたいなものになるが、もし今、ファンに「今場所の優勝力士は?」という予想を投票してもらったら、どうなるだろうか。
 
まあ大の里のダントツ1番人気は堅いとして、2位は?
 
たぶんかなり割れると思うが、大の里の対抗馬となるべきその位置にふさわしい存在として出てきたのが、この日、髙安との1敗同士の対戦を制した霧島ではないだろうか。
 
この日の相手の髙安とは、先場所までこの1年では4勝1敗。かつては苦手としていたが、最近はむしろ分がよく、しかし直近は負けている、という相手だ。二人は左の相四つだが、がっぷり組んでしまうとパワーに勝る髙安が有利だけに、霧島が髙安が組みに来るのを嫌い、結局髙安が突いて、霧島がこれをイナす機をうかがう、という展開が多い。そこで突き起こせれば髙安のペース、突き起こされる前にイナして崩せれば霧島ペースだ。
 
しかしこの日は、髙安が突きを繰り出す展開にならずに勝負がついた。立ち合いはやはり髙安が左差しを狙い、霧島がこれを嫌う形になったが、霧島は右のおっつけで差しにきた髙安の左腕を固め、左は相手の胸を押して前傾姿勢をキープ。これによって髙安との間に空間をつくらず、突きを繰り出せない形にすることに成功した。押そうとした髙安の足が揃ったところを左に回って叩き込み。あっさりと勝負をつけた。

「しっかり取れた感覚があります。立ち合いにしっかり当たることが大事」と霧島。首を痛めてしっかり当たれないときは、前に圧力がかかっていないまま、何とかさばこうとして墓穴を掘るような相撲が多かったが、今場所は首の調子もいいのか、前傾姿勢でしっかり前に圧力がかけられていることで、その後の横への動きにも余裕があり、効果を発揮しているように見える。この日の相撲も、短い時間の中に、それが感じられる取り口だった。
 
この日は御嶽海が藤ノ川の立ち合い変化からの引き足にわずかについていけず土。幕内の全勝がいなくなり、霧島は横綱大の里、平幕の玉鷲、一山本、新入幕の草野、そして御嶽海と並んでトップを並走する形になった。
 
霧島にとって、7日目まで6勝1敗は、12勝を挙げた昨年9月場所以来。3月場所が8勝、5月場所が11勝なので、大関復帰に向けて、今場所は通常なら三段跳びのステップにあたる「足場固めの場所」ということになるが、現在大関は琴櫻一人だけなので、もし優勝、あるいはそれに近い成績を挙げることができれは、今場所後に復帰という機運が盛り上がってくる可能性もゼロではない。

「1敗でトップだが」の問いには、「まだ早い。これからの一番一番が大事」と霧島。
 
1敗力士の中では、大の里を除けば唯一の役力士で、かつ大関経験者。対大の里にはこれまで6連敗というデータはあるものの、まず、何とか直接対決までは、タイか、あわよくばリードという星勘定でいきたいところ。
 
豊昇龍が休場した今場所、大の里の対抗馬として推される存在にはそういう責任がどうしてもかかってくるが、霧島には何とかこの後も踏ん張って、場所を盛り上げていってもらいたいものだ。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事