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2025-07-23

【相撲編集部が選ぶ名古屋場所11日目の一番】元大関をぶん投げた! 新入幕の草野が2敗対決に勝ってトップ4人のうちの一人に

タイミングよく、思い切った上手投げで御嶽海を転がし、再び優勝争いのトップに並んだ草野。新入幕優勝に向け、どこまで快進撃を続けていけるか

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草野(上手投げ)御嶽海

新入幕が、2敗対決で元大関をぶん投げた。
 
草野が御嶽海との対決を制して9勝目。二ケタ勝利にリーチを掛けた。
 
今場所は潜って相手を起こしながら前に出る、全盛時のような相撲がよみがえってきている御嶽海との対戦、ここまで快調に飛ばしてきた草野にとっても、一つの関門と言えた。
 
立ち合いは予想通り、ともに低く立っての差し手争い。右差しを狙う草野と、モロ差し狙いの御嶽海の左の攻防が繰り広げられた。
 
差し手自体は御嶽海の左が中に入る形になったが、草野も脇を絞ってヒジまでは入れさせず。御嶽海はじりじり前に出てきたが、潜って起こすという形にはならなかった。
 
逆の左手側は、草野は立ってすぐに上手。そして、逆サイドの攻防がさほど思うに任せず、御嶽海が下手を探りに来たタイミングで、草野が動いた。少し腰を引くようにすると、思い切って体を開いて、左からの上手投げ。豪快に御嶽海を土俵下まで転がした。

「頭でいくか、張っていくか、迷っている部分があって、ちょっと中途半端だった。立ち合いは重くて。差し負けたけど、うまく対応できた。(投げは)とっさに自然と出た」と草野。この日は、持ち前の低さと動きの速さ、そして勝負どころをつかむ勘のよさを発揮しての白星だったと言えるだろう。このへんは、「普段稽古をしている人たちは優勝争いをしていたりとか、いろんな人がいるので、対応力はついていると思います」という稽古のたまものだ。
 
幕内力士の中では大きいほうとは言えない草野だが、相撲の取り口は一通りでなく、この日のように低さを生かして組みにいくべき相手と、美ノ海や宇良のように突いて中に入れない、あるいは廻しを与えないことが肝になる相手で取り口を使い分けているのもうまいところだ。
 
この日は、きのうまで1敗でトップを走っていた一山本が髙安をよく攻めながらも最後に廻しを許して投げられ2敗目。6人いた2敗勢は、草野のほか、安青錦と琴勝峰が勝ち残った。霧島と玉鷲は横綱・大関陣の壁の前に3敗目。草野に敗れた御嶽海も一歩後退した。このため、11日目を終わり、草野は安青錦、一山本、琴勝峰とならぶトップ集団の一人に名を連ねることになった。客観情勢としては、安青錦が一歩前進、大の里も再び圏内に入ってきた、という感じではあるが……。
 
草野は、まずは優勝より、敢闘賞にもつながる目の前の二ケタ勝利と、目標を近いところに置いているようで、このあたりも自分をコントロールする術を知っているようだ。
 
とはいえ、あすはいよいよ初の三役戦で若隆景と対戦。ここからは優勝戦線のトップに居続ける限り、好調力士か、または上位陣との対戦が続くことになる。
 
あすの若隆景戦は、自分よりさらに低くくるであろう相手をどう起こしていけるかが注目だが、今場所の2敗(対琴勝峰、対隆の勝)は、自分より大きい相手に同じ高さで戦う展開を招いて敗れたものだけに、今後の上位戦では、自分より大きい力士にどう戦うか、も一つのカギになってこよう。
 
横綱大の里がチョンマゲ髪を卒業し、今や「チョンマゲの怪物」と言えばこの草野。部屋の兄弟子の尊富士に続いて新入幕優勝を果たすようなら、2場所連続の十両優勝からの新入幕Vという、前代未聞の記録になる。
 
その快挙に向け、あと何枚壁を破っていけるか。「疲れは多少あるけど、しっかり睡眠をとっているので。サウナにも入って気持ちよく眠れています」という24歳の好漢に、期待したい。

文=藤本泰佑

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