女子プロレス団体「マリーゴールド」は8・30後楽園ホール大会で現在開催中のシングルリーグ戦「DREAM STAR GP2025」天王山を迎える。同大会では、優勝候補の一角であるマリーゴールド・ワールド王者・林下詩美とスーパーフライ王者・岩谷麻優の2年ぶり一騎打ちを中心に注目の公式戦が8試合がラインナップされたが、リーグ戦の星取り、そして“闘いの物語”という意味で最も濃いのはセミファイナルのSTARリーグ公式戦、桜井麻衣vsMIRAIかもしれない。

MIRAIは言う、「負けたくないですね、内容でも、星取りでも。桜井麻衣には全部で勝ちたいです」と。
桜井は言う、「シングルだけじゃなく、タッグでもMIRAIから勝ったことはありません。マリーゴールドに来て、どういうふうにお互い成長したのか、どんな道を歩んできたのか。それをぶつけ合う試合になるんじゃないかなって思います」と。
昨年の3月にスターダムを辞め、5月のマリーゴールド旗揚げに参加したMIRAIと桜井。例えば去年の今ごろ、もし2人のシングルが実現していたら“MIRAI vs 桜井”だったと思う。だが、マリーゴールドで唯一実現している3・9名古屋では、今回と同様に“桜井 vs MIRAI”だった。
年頭のビッグマッチ1・3大田区で桜井は青野未来を下し、ユナイテッド・ナショナル王座初戴冠。じつに6度の防衛を重ね、今なお純白のベルトを保持している。昨年、初開催された「DREAM STAR GP2024」でも大方の予想を覆す優勝決定戦進出を果たす(※優勝は詩美)など、“マリーゴールドの桜井麻衣”は間違いなく飛躍を遂げた。悔し涙を流した旗揚げ戦の野崎渚戦を筆頭につまずき、心が折れそうな瞬間もあったが、桜井は必死に踏ん張り、トップ戦線に食い込むレスラーに成長を遂げた。

桜井「私、思うんです、チャンスは平等に転がってるって。ただ、それを掴む掴まないは本当にちょっとの差で。みんな努力して、みんな頑張ってると思うけど、イスは一つしかないので、誰かが座っちゃったらそのイスは取れない。頑張っても結果に出ない時って相当辛い。その気持ちは誰もが経験してきてる事だと思います。そんな時、私を奮い立たせてくれた、ある人の言葉があります。今までのプロレス人生、ユニットを移動した時、そしてマリーゴールドに来ると決めた時、(中野)たむさんが私にくれた言葉、『自分の選んだ道を正解にしてね』。こう言ってくださった以上、私は私が選んだ道を正解にしないと送り出してくれた人を裏切る事にもなる。だから絶対、この約束を守ってみせるって、そう強く思いました」
4月に現役引退した中野たむとの約束。「だから私、自分の人生を懸ける覚悟でマリーゴールドに来たし、『結果を出して、その覚悟を証明する』『なかなか結果が出なくても絶対投げ出さない』って思って、今までやってきたので」。その意味で言えば、昨年のDREAM STAR GP準優勝は大きな結果だと思われるが、桜井は「でも優勝じゃないので。周りから見たら(準優勝は)飛躍なのかもしれないけど、私は悔しかった。だからこそ今回のDREAM STARでもその覚悟とか思いを(ファンに)伝えたいし、優勝をあきらめないので、絶対に」と強いまなざしとともに逆転優勝を誓った。

対してMIRAI。桜井とのタッグチーム“ミライサク”で初代ツインスター王座戴冠こそ果たしたが、マリーゴールドが2年目に突入してなお、彼女にシングルでのタイトル戴冠はない。スターダム時代、MIRAIはワンダー王座戴冠やシンデレラトーナメント連覇などさまざまな個人タイトルを獲得。実績、キャリア、実力。前述したようにマリーゴールド旗揚げイヤーだったら“桜井vsMIRAI”ではなく、“MIRAIvs桜井”だったと思われる。
話題満載な団体なので忘れがちだが、マリーゴールドは旗揚げ2年目に突入したばかりの若い団体だ。
選手もスタッフも少数精鋭で団体が成り立っている。そのため、選手によってはリング外の役割も担っており、例えばMIRAIはその実力を買われ、コーチ役としてプロレスキャリアの浅い選手たちを指導。南小桃、山岡聖怜、山﨑裕花。団体期待の新人たちのデビュー戦の相手をすべてMIRAIが務めているのも信頼の証。団体への貢献という意味ではMIRAIの功績は計り知れない。
だが、マリーゴールドはプロレス団体で、MIRAIはプロレスラーだ。舞台裏の献身も大事。だが、それ以上にリングでのパフォーマンス、そして結果が重要だ。その意味でMIRAIは、あと一歩が遠い。今年5月の旗揚げ一周年記念興行で詩美が持つワールド王座に挑むも、やはり負けてしまった。
MIRAI自身、そんな現実は十分理解している。だからこそ「DREAM STAR GP2025」開幕の8・2大阪で、MIRAIは「いろんな意味で覚悟を決めて、この夏に挑みます」と背水の思いを本誌に語った。
MIRAI「負けられないです、ホントに。(桜井に)特別な思いはやっぱりあるし、ベルトを持ってる選手だし。“組んでもミライサク、闘ってもミライサク”っていうのは目指してるところだけど、夏の奪い合い、自分が一番になる気しかないので。ミライサク対決といえど、対角に立ったら敵。自分が勝って、優勝に一歩近づくのと同時に、桜井麻衣を大ピンチに追い込んでやろうと思います!」

ともにSTARリーグにエントリーされた2人。MIRAIは現在、3戦1勝1敗1分けの勝ち点3。桜井は5戦3勝2敗の勝ち点6。消化試合数が異なるため一概には言えないが、すでに5戦を消化している桜井にとってMIRAIに負けて3敗目を喫するようなことがあればブロック突破から一気に後退してしまう。初優勝を狙う貴婦人にとって絶対負けられない一戦になるが、両者の過去のシングル戦績はMIRAIの2戦2勝。もっと言えば桜井はタッグも含めてMIRAIに直接勝利をしたことがないが、桜井は「今まではMIRAIの背中を追いかけてきたイメージがあると思いますけど、チャンピオンとして今までとは違う自分を見せないといけないし、今までと違う結果を出さなきゃいけない。勝ちます」とキッパリ。これにMIRAIは「ここまで(リーグ戦を)3試合やって、勝ちも負けも引き分けも経験したので。あとはもう勝ちだけでいい。桜井麻衣に勝って、残り全勝でいきます!」と“残り全勝”を宣言する。
マリーゴールドに来て結果を出せずにきた自分を変えるのも、ライバルに勝てずにきた自分を超えるのも、自分次第。8・30後楽園、3度目のミライサク対決を制すのは桜井か、MIRAIか。ミライサクの今後を占う意味でも重要な一戦になる。

マリーゴールド「DREAM STAR GP2025」
★8月30日(土)東京・後楽園ホール(11:30)
▼DREAMリーグ公式戦(15分1本勝負)
⑧林下詩美<4勝1敗=8点>vs岩谷麻優<2勝1敗=4点>
▼STARリーグ公式戦(15分1本勝負)
⑦桜井麻衣<3勝2敗=6点>vsMIRAI<1勝1敗1分け=3点>
▼STARリーグ公式戦(15分1本勝負)
⑥青野未来<1敗1分=1点>vsちゃんよた<2勝2敗=4点>
▼DREAMリーグ公式戦(15分1本勝負)
⑤天麗皇希<2勝2敗=4点>vs山岡聖怜<2勝2敗=4点>
▼DREAMリーグ公式戦(15分1本勝負)
④ビクトリア弓月<3勝1敗=6点>vsMaria<2勝2敗=4点>
▼STARリーグ公式戦(15分1本勝負)
③後藤智香<1勝2敗=2点>vs野崎渚<3勝1敗=6点>
▼STARリーグ公式戦(15分1本勝負)
②田中きずな<3敗=0点>vs松井珠紗<3勝1敗=6点>
▼STARリーグ公式戦(15分1本勝負)
①CHIAKI<1勝3敗=2点>vs瀬戸レア<4敗=0点>
▼第0試合◎石川奈青&ハミングバード&山﨑裕花vs南小桃&勇気みなみ&橘渚