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2025-10-02

【アメフト】「愚直なスタンダード向上の勝利」ノジマ相模原、富士通を破る(1)

【ノジマ相模原vs富士通】残り7秒、富士通の53ヤードFGトライを、ノジマ相模原のLBレッドワインが指先でチップし不成功に。劇的な幕切れとなった=佐伯航平さん撮影、ノジマ相模原ライズ提供

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アメリカンフットボールの国内最高峰・Xリーグの「X1 スーパー」で、9月最大のニュースは、ノジマ相模原ライズが、富士通フロンティアーズを破ったことだろう。富士通が、パナソニックインパルス、オービックシーガルズ以外の相手に、レギュラーシーズンで敗れたのは2012年11月以来というアップセットだった。この大一番の持つ意味を2回に分けて振り返る。

ノジマ相模原ライズ○29-28●富士通フロンティアーズ
(2025年9月14日@富士通スタジアム川崎)



富士通オフェンス順調に3TDも、ランは出ず---前半

 まずは試合経過を振り返りたい。

■前半
・富士通1Q 8:09 #21 三宅昂輝, 1ヤードラン (キック成功) 
=15回83ヤード 8:09【富士通7-0ノジマ相模原】

・ノジマ相模原1Q 9:49 QBカート・パランデック, 55ヤードラン (キック成功)
=5回75ヤード 1:40【富士通7-7ノジマ相模原】

・富士通2Q 1:40 QB高木翼→WR木村和喜, 3ヤードパスTD (キック成功)
=7回75ヤード 3:51【富士通21-17ノジマ相模原】

・ノジマ相模原2Q 6:02 K竹内空, 22ヤードFG【富士通14-10ノジマ相模原】

・富士通2Q 8:22 QB高木翼→WR松井理己, 24ヤードパスTD (キック成功)
=6回75ヤード 2:20 【富士通21-10ノジマ相模原】

【ノジマ相模原vs富士通】第1Q、ノジマ相模原QBカート・パランデックが55ヤードのTDラン=佐伯航平さん撮影、ノジマ相模原ライズ提供


 先制したのは富士通。RB三宅昂輝がTDランでスコアした。ノジマ相模原はすぐに、QBカート・パランデックがビッグプレー、55ヤードのTDランで追いついたが、富士通はQB高木翼からWR木村和喜、松井理己にTDパスが決まった。富士通のTDは83ヤード、75ヤード、75ヤード(反則15ヤードを含む)と、3本共にしっかりオフェンスがドライブした。

 富士通は、昨年の同じカードでは前半を1TDに抑えられたのに比べ、遥かに順調な滑り出しに見えた。しかし、敗因は芽を出していた。試合冒頭のRBトラショーン・ニクソンの11ヤードランを除けば、ランプレーはすべて4ヤード以下。前半に進んだオフェンス220ヤードの中で、ランはわずか28ヤードだった。

 一方のノジマ相模原は、前半は10得点だったものの、オフェンスは174ヤードをドライブした。パランデックの55ヤードTDランを除いてもランで43ヤードをゲイン。さらにノジマ相模原はターンオーバーが一つもなかった。

ノジマ相模原、第4Qに11点差を逆転---後半

■後半
・ノジマ相模原3Q 1:58 QBカート・パランデック→WRテイ・カニンガムヤード 30ヤードパスTD  (キック成功) 
=6回75ヤード 1:58 【富士通21-17ノジマ相模原】

・富士通4Q 4:31 RBトラショーン・ニクソン, 13ヤードランTD (キック成功)
=3回36ヤード 1:41 【富士通28-17ノジマ相模原】

・ノジマ相模原4Q 7:56 QBカート・パランデック→WR宜本潤平, 29ヤードパス (QBカート・パランデック、2点CVパス失敗) 
=12回75ヤード 3:25【富士通28-23ノジマ相模原】

・ノジマ相模原4Q 11:12 QBカート・パランデック→WRテイ・カニンガムヤード 6ヤードパス (RB吉澤祥, 2点CVラン失敗)
=10回49ヤード 3:16【富士通28-29ノジマ相模原】
【ノジマ相模原vs富士通】第3Q、ノジマ相模原DB宮本が富士通WR木村と競り合いながらインターセプト=佐伯航平さん撮影、ノジマ相模原ライズ提供


 後半最初のドライブで、ノジマ相模原はQBパランデックから、WRテイ・カニンガムへのホットラインが開通、2分足らずでTDを奪う。

 そして第3Qは、ノジマ相模原ディフェンスが、獅子奮迅の働きを見せる。元富士通のDL齊川尚之がQB高木をサックしてファンブルフォース、DL佐伯哲明がリカバーする。

 このチャンスは、オフェンスのファンブルですぐに富士通ボールになってしまうが、次の富士通のドライブでは、DB宮本侑知が、QB高木のパスを、WR木村と競り合いながら見事にインターセプトする。

 富士通はこのドライブ、木村にパスを集中していた。出るプレーは出なくなるまで続けるのがアメフトの定石とは言え、木村を使い過ぎた場面だった。

 ノジマ相模原はこのチャンスも、FG失敗に終わったが、後から振り返ると、第3Qに富士通の得点を許さなかったのが、勝因の一つとなった。

 第4Q、富士通は、相手ゴールまで33ヤードからFGを狙わずにパント。P納所幸司の絶妙な技で、ノジマ相模原は自陣ゴール前1ヤードからのオフェンスとなる。そして3&アウトでゴール前9ヤードからのパントはショート。絶好のポジションからのオフェンスで、富士通はニクソンが13ヤードのランTD。28-17とノジマ相模原を突き放したかに見えた。

 残り7分29秒で、11点差。QBパランデックは、自らのキーパー、RB吉澤のランに、パスを交えて前進。4thダウンギャンブルではWR小林岳史に9ヤードのパスを決める。そして、元富士通主将、現ノジマ相模原主将のWR宜本に29ヤードのTDパスが決まった。2ポイントコンバージョンは失敗した。

 残り4分04秒、ノジマ相模原は控えK佐藤太希を起用してオンサイドキックを狙った。佐藤はこの日初めてのキックだったが、起用に応えて見事にオンサイドを成功、WRカニンガムがキャッチした。

 ノジマ相模原はQBパランデック、RB吉澤のランで攻め込むと、3rdダウン17ヤード、4thダウン2ヤードを吉澤の走り(1本はショベルパススクリーン)で取り切って、ゴール前へ。

 最後はまたしてもホットライン。QBパランデックからWRカニンガムへTDパスが決まった。29-28と逆転。2ポイントは失敗し、ノジマ相模原のリードは1点。

 富士通はWR柴田源太、木村、松井へのパスでゴールまで36ヤードの地点まで進んだが、QB高木のパスは3回続けて失敗。試合時間残り7秒で4thダウン10ヤード。富士通K納所の53ヤードのFGトライは、ノジマ相模原のLBフィリップ・レッドワインに指先でチップされ、不成功。ノジマ相模原の劇的な勝利となった。

真っ向勝負を挑み、富士通を乗り越えた

両チームのオフェンススタッツは次の通り。

・トータルヤード:富士通329ヤード、ノジマ相模原416ヤード
・オフェンスプレイ数:富士通51、ノジマ相模原62
・平均獲得ヤード:富士通6.5ヤード、ノジマ相模原6.7ヤード

・ラン獲得ヤード数:富士通44ヤード、ノジマ相模原176ヤード
・ランプレイ数:富士通17回、ノジマ相模原24回
・ラン平均獲得ヤード:富士通2.6ヤード、ノジマ相模原7.3ヤード

・パス獲得ヤード:富士通285ヤード、ノジマ相模原240ヤード
・パス回数(成功/試投 TD/インターセプト):富士通28/34、2/1 ノジマ相模原31/38、3/0 

・ファーストダウン更新数:富士通22(ラン2、パス16、反則4) 、ノジマ相模原21(ラン8、パス12、反則1)
・サードダウン コンバージョン(更新率) 富士通4/6(67%) 、ノジマ相模原5/11(46%)
・フォースダウン コンバージョン(更新率) 富士通0/0、ノジマ相模原 2/2(100%)

【ノジマ相模原vs富士通】第3Q、ノジマ相模原DL齊川が富士通QB高木をサックしてファンブルフォース=佐伯航平さん撮影、ノジマ相模原ライズ提供


 ダウン更新とパス獲得ヤードを除けば、ほぼすべてのスタッツで、ノジマ相模原が富士通を上回った。特にラン獲得ヤーデージはノジマ相模原の完勝だ。第4Qの、逆転TDにつながったRB吉澤への15ヤードショベルパスも、実質的なランプレー。試合終盤まで、ノジマ相模原の走りが止まらなかった。

 ノジマ相模原は富士通に真っ向勝負を挑んだ。OLもDLもLBもDBもRBも、みな正面からぶち当たった。そして乗り越えた。ここに、この勝利の大きな意味がある。

 試合後2週間たって、ノジマ相模原の城ケ瀧一朗ヘッドコーチはこう振り返った。

 「富士通に勝とう、ではなかった。自分たちのフットボールスタンダードを上げるということを貫いた。勝負に勝つことばかりを考えていたら、勝利はなかったかもしれない」。

【小座野容斉】

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