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2025-10-09

【陸上】国スポ・男女800mで東京世界選手権代表で日本記録保持者の落合晃、久保凛が大会新競演

成年男子800mで落合が、少年女子A800mでは久保が大会記録を樹立した(写真/黒崎雅久、中野英聡)

10月3日から滋賀県の平和島HATOスタジアムで行われた国民スポーツ大会(国スポ)。大会2日目の4日、東京世界選手権800mに出場した19歳の落合晃(滋賀・駒大1年)と、17歳の久保凛(大阪・東大阪大敬愛高3年)が出場。10代2人の日本記録保持者が、国スポで大会新を競演した。先に行われた少年女子Aで久保は2分01秒72、直後の成年男子で落合は1分45秒20をマークし、スタンドから喝采を浴びた。

挑戦して走ることを楽しむ

2人とも思いを込めたレースだった。
久保は高校最後の800m。7月の日本選手権で走った1分59秒52は自身2回目の日本新。その記録、すなわち「自己記録を出して終わる」(久保)ことを目標に掲げて臨んだ。

スタートからすぐに独走へ。タイマーが58秒に変わるタイミングで400mを通過した。2周目、記録を懸命に追いかけたが、3回目の日本新には届かず。「ハイペースで挑戦しようと思っていました。2周目に力んでしまう自分の課題を感じましたし、1秒台は悔しいタイム」と感想を口にした。

そして、「いつ走っても自己ベストが出るっていう、まぁそんな人はいないんですけど、そういう体をつくれるようになっていきたい。来シーズンはもっとレベルを上げて、成長した姿を見せられたらなと思います」と、いつものように向上心を込めて話した。

滋賀県高島市出身の落合にとって今回の国スポは特別な晴れ舞台だ。久保の大会新の余韻が漂うなか、今度は落合が主役になった。

落合も「日本記録で恩返しができれば」とハイペースで突っ込んだ。400mを52秒で通過すると、バックストレートではさらにリードを広げた。記録は大会新の1分45秒20だったが、1分44秒80の日本記録には及ばなかった。悔しさを感じながらも、優勝をたたえる拍手が響くなか、落合の表情は晴れがましかった。

高島市立今津中、滋賀学園高から駒大に進学して7ヶ月。「ベストを出せずというなかなか苦しいシーズンになっていますが、(1分)45秒台でコンスタントに走れているのは力がついてきている証拠かなと思うので、自信にしていきたいです」
世界陸上デビューはほろ苦かったが、「まだまだ強くならないと、という気持ちがあります」と視線を上げる。そして「世界で勝負できる選手になって帰ってきます」と頼もしい誓いを立てた。

落合と久保は、ともに2024年に日本記録保持者となり、2025年には世界選手権デビューを飾った。世界選手権では共に予選組7着で敗退。出場できてよかったではなく、自分の走りをさせてもらえなかったことが悔しいからこその感情だろう。

現在地にたどり着くまでの軌跡をたどると、初々しかった全日中やインターハイデビューから、走りも言葉も気持ちも、たくましくなった2人がまぶしく映る。なにより、2人には共通して変わらないものがある。「挑戦して走ること」を楽しむという揺るぎない前提を持ち続けているということだ。

来年以降も、26年アジア大会、27年北京世界選手権、28年ロス五輪へと道は続く。2人のこれからの物語を楽しみに待とう。

文/中尾義晴 写真/黒崎雅久、中野英聡

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