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2025-10-14

【アメフト】早稲田と明治、傑出した2人のRBの戦いが勝敗を分けた

RB安藤の試合終盤の独走。タックラーを何人も弾き、エンドゾーンまで貪欲に走り切る=撮影:北川直樹

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アメリカンフットボールの関東大学1部TOP8のライバル校というと、早稲田大学は慶應義塾大学、明治大学は立教大学となる。だが、早稲田と明治もお互いにライバル心を強く燃やしている。大きく強いライン、強力なランを主体とした力のフットボールが似ている。近年は早稲田が、パス中心の戦術で結果を出してきた面もあり、類似感が薄れていたが、今季は両校が爆発的なランゲームを展開して、対決に注目が集まった。早稲田の安藤慶太郎(4年=早大学院)と、明治の高橋周平(4年=足立学園)という、傑出した2人のRBを中心に、10月5日の両校の対戦を振り返った。【写真/文:北川直樹】

早稲田大学ビッグベアーズ○34-20●明治大学グリフィンズ
(2025年10月5日@富士通スタジアム川崎)


明治がRB高橋の75yd独走TDで先制

早稲田は第1シリーズでQB船橋がショートパスで前進を図るも、3rdダウンでWR吉規颯真(4年=早大学院)へのパスが-2ydとなり、P中原秀城(4年=南山)の40ydパントで攻守交代となった。

明治の最初の攻撃では、QB新楽圭冬(4年=都立戸山)からRB高橋周平(4年=足立学園)へのスクリーンパスが54ydのビッグゲインを生み、一気に敵陣30ydまで前進。しかしゴール前では早稲田守備陣が粘りを見せ、4thダウン6からK田村勇次郎(4年=矢板中央)の43yd FGで先制点を奪った。6分38秒、明治が3-0とリードする。

早稲田は長内一航(3年=早大実業)の20ydリターンから反撃を開始するも、ゴール前の3rdダウン1で安藤が-3ydに抑えられる。それでも4thダウン4からK小林賢多(4年=八千代松蔭)が21yd FGを決めて追いつき、2分06秒に3-3の同点とした。

明治は後藤航太郎(3年=南山)の21ydリターンで好位置の25yd地点から攻撃を開始。2ndダウン13から高橋が中央ゾーンを駆け上がり、75ydの独走TDを決めた。明治が10-3とリードして第1Qを終える。

第2Qに入ると、早稲田が反撃の狼煙を上げる。敵陣10ydから船橋が吉規へ10ydのTDパスを通し、8分19秒に10-10の同点に追いつく。

第2Qの終盤も点の取り合いとなった。早稲田は長内のランでレッドゾーンに侵入すると、2ndダウン1から安藤が1ydのTDランで押し込み、前半残り1分56秒に17-10と逆転に成功。PAT小林も決まり、早稲田がリードを奪った。

明治も応じる。終盤のシリーズで新楽がTE金子航大(4年=千葉日一)、WR杉崎友則(4年=明大中野)へと繋ぎ、レッドゾーンへ到達。残り1分02秒、高橋が20ydのTDランを決め、PAT田村も成功。17-17の同点で折り返した。

明治RB高橋は出足の鋭いランがこの試合でも炸裂した=撮影:北川直樹
明治RB高橋は出足の鋭いランがこの試合でも炸裂した=撮影:北川直樹

安藤の62yd独走TDが試合を決める

後半開始の明治の攻撃は3アンドアウトに終わる。早稲田は自陣から安藤のラン、船橋のキープ、ショートパスで着実に前進。5分45秒、安藤が20ydのTDランを決めて24-17と再びリードを奪う。PAT小林も成功し、早稲田が7点差をつけた。

早稲田は守備陣も、後半からアジャストし、明治の攻撃陣が苦しむ展開を作った。素早い判断とタックルが光り、明治はパントやインターセプトで攻撃を切られた。

しかし第4Q残り10分29秒、早稲田の3rdダウン7で船橋のパスを明治DB齋藤翼(4年=明大中野)がインターセプト。明治に反撃のチャンスが訪れる。

明治は自陣から高橋の右サイド展開のロングランなどで前進。レッドゾーンでは早稲田DL田中(90)のクイックタックルやQBサックで後退を余儀なくされるが、6分21秒、4thダウン7から田村が25yd FGを成功させ、20-24と4点差まで詰め寄った。

しかし、ここから試合を決定づけるプレーが生まれた。5分49秒、自陣からの第1プレーで安藤が左サイドラインを駆け上がり、62ydの独走TDを決めた。PAT小林も成功し、31-20と再び11点差に広げた。

2分24秒、早稲田は敵陣17ydの4thダウン3から小林が34yd FGを成功させ、34-20の2ポゼッション差とした。

残り1分52秒、3rdダウン23(自陣29yd)から明治QB新楽のパスを早稲田DB宮澤源(2年=麻布)がインターセプト。早稲田は敵陣46ydから時間を消費し、試合終了となった。

早稲田はLB原康介を中心にサイズとスピードを兼ね備えた守備陣が躍動した=撮影:北川直樹
早稲田はLB原康介を中心にサイズとスピードを兼ね備えた守備陣が躍動した=撮影:北川直樹

QB船橋が攻撃にリズム、K小林のパーフェクトキックも光る

早稲田は、RB安藤が3TDランを記録。序盤から終盤まで一貫して力強い走りでチームを牽引した。3本のTDは1yd、20yd、62ydと長短織り交ぜた形で、明治守備陣を翻弄し続けた。特に第4Qの62yd独走TDは、明治が4点差まで詰め寄った直後の決定打となった。

QB船橋もショートからミドルのパス、フェイクの使い分けが的確で、攻撃にリズムを作った。WR吉規はTDキャッチを含む好捕を見せ、多彩な場面で存在感を示した。

そして、K小林のパーフェクトなキックも特筆すべき点だ。FG2本2本成功、PAT4本全て成功と完璧な仕事ぶりで、チームの勝利を支えた。

一方の明治は、RB高橋が75yd、20ydの2本のTDランを記録し、爆発力を見せた。QB新楽も要所でショートパスを通し、K田村もFG2本、PAT2本と貢献。DB齋藤齋藤の第4Qのインターセプトも反撃の契機を作る好プレーだった。

しかし、第4Qの攻撃陣の停滞が響いた。レッドゾーンで早稲田守備陣の前に後退を余儀なくされ、最後は新楽のパスがインターセプトされて試合が決した。

早稲田は堅実な守備と、要所でのビッグプレーで明治を上回った。安藤の爆発的な走りは、リーグ戦後半戦に向けて弾みをつける勝利となった。



K小林の安定したキックが早稲田を支えている=撮影:北川直樹

チーム成績

ファーストダウン:早稲田大学 18、明治大学 10
総獲得yd:早稲田大学 410、明治大学 301
ラン獲得yd:早稲田大学 221(36回)、明治大学 184(23回)
パス獲得yd:早稲田大学 189、明治大学 117
パス成功率(試投/成功/被INT):早稲田大学 29/17/1、明治大学 16/7/1
3rdダウン成功率:早稲田大学 8/14(57%)、明治大学 0/7(0%)
反則:早稲田大学 3回25yd、明治大学 3回20yd
ボール支配時間:早稲田大学 31分24秒、明治大学 16分36秒

個人成績(主な選手)

【早稲田大学】
RB安藤慶太郎:ラン28回、191yd 3TD
QB船橋怜:パス17/29、189yd 1TD 1INT
WR吉規颯真:6回レシーブ 62yd 1TD
K小林賢多:FG 2/2(21yd、34yd)、PAT 4/4
DB宮澤源:1INT

【明治大学】
 RB高橋周平:ラン11回 156yd 2TD
 QB新楽圭冬:パス7/16、117yd
 TE金子航大:2回レシーブ、36yd
 K田村勇次郎:FG 2/2(43yd、25yd)、PAT 2/2
 DB齋藤翼:1INT
 
 
「成長している部分と変わらない部分、両方ある」
早稲田大学 荒木延祥ヘッドコーチの話
 
 実力で言えば、明治大と同じか、もしくは向こうがちょっと上だったと思います。サイドラインから見ていてそう感じました。

明治の守備陣が安藤をケアしてくる形で、色々とフロントを動かされて、うちのランプレーに対してアジャストされていました。ですから、ヒッチスクリーンなど、早いタイミングで外に散らしながら攻めていきました。

ただ、前半は船橋のパスが何回か浮いてしまって、あの辺りはやっぱりずっと修正できていません。もうちょっと確実に空いているところにボールを落とせていたら、もうちょっと展開は変わったかなと思います。

シーズン中盤になってきて、成長している部分と変わらない部分、両方ありますね。しんどいところでタイトなパスを通したり、あの辺りの勇気というか、呼吸というか、そういうのは上がってきています。けれど、イージーに空いているのに高いボールを投げて取れないみたいなのは、今も変わっていません。それは課題だと思います。

後半の安藤の独走TDのプレーについては、相手へのアジャストはもう前半でできていたので、出せると思っていました。あのシリーズはしっかりとドライブして、TDを取れたら勝ちのシリーズでしたから、前半に成功したことを確認して、みんなが思いっきりできたからかなと思います。

前半17-17の同点から抜け出せたのは、前半やってみて私たちが戦えるプレーが明確になった、整理ができたということですね。ディフェンスもある程度、前半はちょっと色々試してみて、後半は絞りました。オフェンスもディフェンスも、最適なプレーコールができたかなと思います。

早稲田は、荒木ヘッドコーチの求める高い水準に向けて、チームが仕上がりつつある=撮影:北川直樹
早稲田は、荒木ヘッドコーチの求める高い水準に向けて、チームが仕上がりつつある=撮影:北川直樹

WR吉規は勝負どころで良いレシーブを見せた=撮影:北川直樹
WR吉規は勝負どころで良いレシーブを見せた=撮影:北川直樹


QB船橋のさらなるパス精度向上が今後のキーになる=撮影:北川直樹

【北川直樹】

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