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2025-11-20

【相撲編集部が選ぶ九州場所12日目の一番】豊昇龍気迫の突き! 2敗3人がそれぞれ勝ち、さあ「決勝リーグ」へ

最後も駄目を押すように髙安を土俵下に叩き落した豊昇龍。場所後半の調子と気迫という意味では、2敗の3人の中でも一番のものをもって、あすからの直接対決に臨む

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豊昇龍(押し出し)髙安

さあ、「決勝リーグ」だ。
 
大の里、豊昇龍、安青錦の2敗3人を先頭に、3敗に平幕3人の混戦で迎えた12日目。結果から言えば、少し優勝争いをする人数が絞られたうえで、2敗3人の直接対決に入ることになった。
 
まずこの日の幕内前半戦、3敗だった錦富士が、よく攻めて出たが一山本に突き落とされて黒星。一方、時疾風は熱海富士得意の右四つになりながらも動き続けて最後は右下手投げと執念の白星。3敗を守ってダークホースの位置をキープした。
 
そして後半に入って結び4番。まず2敗勢の先頭を切って安青錦。立ち合いこそ一度つっかけて硬さを見せたが、取組では左の廻しを離さず、大事に取って2敗を守った。
 
続いて3敗勢の義ノ富士。この日もいい攻めを見せたが、あとわずかのところで琴櫻に叩き込まれて4敗となり、ほぼ脱落となった。
 
横綱が登場し、まず大の里。王鵬に対して、右はおっつけられて深く入らなかったが、相手の右ノド輪をはね上げて左ハズで攻めて寄り切った。
 
そして結び。2敗組で最後に上がった豊昇龍の気迫がすごかった。髙安戦、立ち合い前からにらみ合いという伏線もあったが、まずは猛然と突いて出て髙安のカチ上げを無力化、すぐ右上手を狙ったがこれはつかめず。その後しばらく突き合いとなったが、髙安の突きにアツくなった横綱が相手の顔を目がけて何発か張りに行く場面も。
 
もしここで相手にサッと掬われたりすると危なかったところだが、何発か張ったところで少し冷静さを取り戻したか、横綱は左差し右上手狙いに。上手が取れないとみるや右を巻き替え、右から起こしながら、左も髙安のヒジを下からはね上げ、最後はハズにかかって押し出した。途中は若干、アツくなりすぎたきらいはあったが、集中力と気迫は十分見せた一番だった。
 
かくしていよいよあすからは2敗の「3強」が、大関琴櫻も交えての「決勝リーグ」を戦うことになった。この欄で何度も書いているように、2敗の3人の過去の対戦成績は、「グー、チョキ、パー」の関係なので、ほとんど互角の戦いではあるが、あえて可能性で順番をつけようとすると、どうなるだろうか。
 
まず、このジャンケンの輪で、「これまで勝っていた相手にはそのまま勝ち、これまで負けていた相手を倒す」という可能性がもっともあるのは、やはり大の里だろう。大の里対安青錦、安青錦対豊昇龍はいずれも対戦成績2対0と「完封」だが、大の里は豊昇龍に分が悪いとは言っても、先場所の優勝決定戦でも勝っており、まるで歯が立たないわけではない。
 
逆に、この点でやや苦しいのは、やはり番付が下の安青錦か。あす対戦の大の里に対して、どういう手立てを講じれば勝てるのかのイメージがあまりわかない。義ノ富士がやったように、相手の右差しを嫌いつつ、何か速攻を掛ける以外にない気はするが……。そして、11日目に義ノ富士に一方的に突き出されるという相撲があったのも、豊昇龍戦を考えたとき、少し気になる。これまで、豊昇龍は安青錦には最初突っ張っても最後は組みにきていたが「徹底的に突けばいい」というヒントは得たはずで、そのあたりがどう影響するか(まあ、この日のようにアツくなって張り手にきてくれれば、逆に食いつける可能性もあるが)。
 
そして、場所後半に入っての調子と集中力という点では、やはり現状では豊昇龍が3人の中では最も上だと言えるだろう。今書いたように、安青錦攻略の糸口も、なんとなく見えているような気もする。
 
こう考えると、微差で豊昇龍が大の里を上回り一番手、大の里が二番手で、安青錦という順になるか。裏のキーマンの琴櫻、ダークホースの時疾風の存在も相まって、興味は尽きないが、やはりまずは「グー、チョキ、パー」の関係を突き破れる力士が現れるかどうかが最大の焦点。「新しい展開、新しい景色を見せてくれた者が勝者となる」というのも、なかなかいい舞台設定ではないか。

文=藤本泰祐

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