close

2026-03-14

【相撲編集部が選ぶ春場所7日目の一番】熱海富士が先場所優勝決定戦の雪辱。安青錦は綱取り絶望の4敗目

今場所は右四つがっぷりに組み止めた熱海富士が上手投げで安青錦に雪辱。安青錦は4敗目で、綱取りはまた出直しとなった

全ての画像を見る
熱海富士(上手投げ)安青錦

前半戦でご当所力士同士の宇良と豪ノ山の「寝屋川対決」が館内を沸かせた春場所7日目。幕内後半では、安青錦と熱海富士の、先場所の優勝決定戦と同じ顔合わせの取組があった。
 
ただ、顔合わせは同じでも、二人の状況は、それぞれに先場所の千秋楽とは全く違うものに変化していた。安青錦は綱取りをかける立場となったが、6日目までに思いもかけぬ3敗で、もう一つも負けられない中での戦い、熱海富士は新小結となり、大の里や琴櫻を破って自信を深めての戦い。そして勝負は、少し優勝決定戦と似ているような展開にも見えながら、しかし結果は、やはり違う形に出た。ほんのちょっとした違いなのだろうが、それで結果が変わってしまう。この辺が相撲の面白いところでもあり、怖いところだ。
 
立ち合い、熱海富士がカチあげ気味に当たるところまでは先場所の優勝決定戦と同じだったが、まず違ったのはそこから突き上げるようにして熱海富士が攻め込んだところだ。頭を上げられないようしのいだ安青錦が押し返して浅い右四つ。しかし正面から組むのに近い形になってしまったので、大関は攻め切れない。熱海富士が体を密着させて右から徐々に起こす。安青錦は優勝決定戦で逆転技となった首投げを見せようとするが、「優勝決定戦の動画は何度も見た」という熱海富士が体を密着させているため決まらず。そこから右四つがっぷりとなっては大関は逃げられず、最後は上手投げで、熱海富士が雪辱を果たした。
 
熱海富士は、先場所の優勝決定戦からさらに進歩していることを証明した形だが、本当にここ最近は急激に力をつけてきたように見える。以前は立ち合いに左上手に手がかかったときの圧力にすごさはあるものの、不十分でも体に任せて前に出て、攻め切れるか攻め切れないかという相撲、という印象の力士だった。だが最近はまさにこの日の相撲のように、立ち合いは立ち合いで圧力を出し、そのあとは勢い任せではなく、しっかりと左上手をつかんでから前に出る形に変わって、より体が生かせるようになり、相撲も落ち着いてきたように思う。
 
これで横綱・大関戦を終えて4勝3敗。新三役での勝ち越しも見えてくる星だ。後半戦では動きの速い小兵力士との対戦も入ってくることが予想され、また上位戦とは違う戦い方が要求されるそのあたりの相手をどうさばいていくかが注目されるが、そこをうまく乗り切れれば、いよいよ大器覚醒となる。
 
一方、安青錦はこれで4敗目。さすがに綱取りは絶望だろう。「前相撲から所要16場所での横綱」はならなかったが、まあ、その夢を見させてくれただけでも立派なもの。これは見ているファンの勝手な思いに過ぎないが、歴史的快挙は達成できれば痛快だったろうが、まあどこまでも壁なく上がっていくのではあっけなさすぎるところも。壁に当たって、そこを乗り越える姿があってこそドラマ。まずは今場所ここからも気持ちを切らさず取り切り、また再チャレンジへとつなげていってほしいものだ。
 
この日は優勝争いのほうでは、きのうまで7人いた1敗力士は正代が敗れただけで、残る6人(豊昇龍、霧島、髙安、隆の勝、琴勝峰、豪ノ山)は、順調に星を伸ばした。中でも豊昇龍がぐんぐんいい内容になってきているのが目を引く。
 
あすは1敗の関脇同士で霧島と髙安がサバイバル戦、隆の勝も安青錦との対戦で三役戦がスタートする。V本命の豊昇龍に食いついていくのは、果たしてだれになるだろうか。

文=藤本泰祐

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事