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2026-03-21

【相撲編集部が選ぶ春場所14日目の一番】優勝争う3人が全員黒星。霧島の14場所ぶり3回目のV決まる

霧島は安青錦に左下手を許して起こせず、最後は下手投げで黒星。それでも豊昇龍と琴勝峰も敗れたことにより、14場所ぶり3回目の優勝が決まった

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安青錦(下手投げ)霧島

まさかこんな形で決まるとは……。

霧島が豊昇龍、琴勝峰を2差でリードし、「勝てば優勝決定」で迎えた14日目。しかし実はもう一つ、多くの人が忘れていた別の優勝決定の形があった。「優勝を争う3人が全員負けて優勝決定」だ。この日はまず琴勝峰が熱海富士に押し出されて4敗目。ここまではある程度、「それもあるだろう」という想定の範囲内だったが、「まあ、勝って決めるだろう」と見ていたら、霧島は安青錦を全く起こせず、下手投げに敗れてしまった。「あらら、優勝決定は千秋楽か……」と思っていたら、なんと豊昇龍も琴櫻にガッチリつかまえられ、外掛けに尻餅。ここで霧島の14場所ぶり3回目の優勝が決まった。

われわれスポーツメディアが言うところの「負け決まり」というヤツだ。トーナメント形式の競技の場合は、必ず決勝戦で個人やチームが勝つことで優勝が決まるが、この大相撲やプロ野球など、リーグ戦形式の競技の場合は、「二番手が負けた結果、優勝が決まる」ということがあり得る。
 
この場合、勝者の「やったぞ!」というイメージの写真がないので、雑誌などの誌面を作るほうとしては、どういう構成にするか、大いに困ることになるわけである。
 
まあそんな話はともかく、この日の霧島は、右が使えなかったのが敗因と言えるだろう。3連敗だった対安青錦戦に初めて勝った先場所と、まず左で掬って起こしにいったのは同じだったが、先場所は右からおっつけて安青錦に得意の左の廻しを与えず、モロ差しに持っていき、休まず攻めて勝ったのに対し、今場所は立ち合いですぐに左の廻しを許してしまった。
 
あくまで結果論だが、今場所の安青錦の調子を考えると、組んで起こそうとするより、まず突いたりして、もう少し足を使う、ドタバタした展開に持っていったほうがよかったかもしれない。低い体勢で左の廻しをつかむことができれば安青錦の展開。霧島は右上手を取ったが何もできず、最後は下手投げで捻り倒された。

安青錦のほうは、これで7勝7敗に持ち込んだ。あすの相手の豊昇龍戦は得意としており、「綱取り一転カド番」の危機を脱せる可能性も、これで膨らんできたと言える。

「自分が勝って決まればよかったけど、優勝が決まってよかったと思います」と霧島。ちょっと締まらない決まり方にはなってしまったが、まあ優勝は優勝だ。

最近は首などのケガに悩まされてきたが、「また頑張ればいいことがある。そう信じてやってきた」と、あきらめない努力が実を結んだ。

家族も支えになったよう。「あしたはお母さん(エフゲレルさん)の誕生日なんで、きょうとあす、どっちかで決めたかった。また、娘(アヤラッゴーちゃん)は2回目の優勝のときは恥ずかしくてバンザイができなかった。1年前から、バンザイを練習してきたから、パパ優勝して、と言われていた。娘との約束を一つかなえて、母の誕生日プレゼントになってうれしいです」と語った。

ちなみに本誌のバックナンバーで確認したところ、前回の優勝時、娘さんがバンザイしている写真がしっかり載っているのだが……、まあ、いい話なのでヨシとしよう。

さてしかし、こうなると「大関から下がって、また優勝したい、(大関に)戻りたいという気持ちで稽古を重ねてきた」という霧島にとって、あす千秋楽の白星は大事になってくるだろう。星としては、もう十分、大関復帰するに足る成績は残していると思うが、この日の優勝決定と同様、最後が締まらないと、大関復帰への気運の盛り上がりがもう一つ、ということになってしまいかねないからだ。

人の印象というものは、最後に上書きされたものに左右されやすいので、最後が締まらないと、人は、途中強かったことを忘れてしまう。そのためにも、あすは勝って締めたいところ。

まあ、われわれスポーツメディアのほうも、最後の印象やムードだけに引きずられることのないよう、気をつけていかなければいけないが。

文=藤本泰祐

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