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2026-03-31

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第37回「ゲン担ぎパート2」その3

平成12年九州場所、岩木山は何と初日から12連敗。「ゲン直しもやり尽くした」あと、ようやく13日目に豊桜を降して初日を出し、この表情

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溺れるものはワラをもつかむと言いますが、勝たなければ人生が開けない力士たちだって似たような心境です。
勝つためには手当たり次第、なんだってつかみます。
その一つがゲン担ぎです。
平成22年にスタートした第1回目のテーマがゲン担ぎで、力士たちのさまざまなゲン担ぎの生態、面白エピソードを紹介しました。
しかし、とても1回ぐらいで紹介しきれるものではありません。
それだけ力士たちは勝つことに必死な証拠でもあります。
そこで、今回からゲン担ぎパート2をお送りしましょう。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

何をやっても

ゲン担ぎしても効果がないことを痛感した力士はほかにもいる。

平成18(2006)年九州場所の岩木山(現関ノ戸親方)もそうだった。

西前頭筆頭というなかなか勝ち越すのが難しい地位ではあったが、初日からなんと12連敗。9日目、西小結の露鵬に立ち合い、左に変わられて上手を取られ、上手投げで放り投げられた。憮然とした表情で支度部屋に戻ってきた岩木山は、

「やることなすこと、全部裏目だ。きょうみたいに思い切って出ていけば変わられるし、きのう(安美錦戦)みたいに見ていけば思い切りかまされる。自分でも歯がゆいし、情けないし、(応援してくれる)みんなに申し訳ない。ゲン直しもやり尽くしてもうやることがなくなったので、夕べはふて寝しましたよ。(午後10時前にはフトンに入って」

と天を仰いだ。

この岩木山がようやく連敗地獄から脱したのは13日目だった。東前頭8枚目の豊桜を押し出して遅すぎる初白星を挙げた岩木山は、

「連敗中、嫌な夢ばっかり見ていましたよ。夢の中でも、外を出歩いて恥ずかしくないのかとか、もう死んだほうがいいんじゃないかとか、考えていました。実は、この日も負けていたら、親方と休場することを決めて部屋を出てきたんです。これで明日も土俵に上がれます」

とポツリ。力士は負けが続くと、ふて寝しても夢に怯える弱気な少年に帰るのだ。

月刊『相撲』平成25年11月号掲載

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