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2026-05-08

【連載 大相撲が大好きになる 話の玉手箱】第38回「子煩悩」その1

平成27年初場所7日目、常幸龍は横綱日馬富士を土俵際で逆転して、初の金星を 獲得

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季節が過ぎ去るスピードって速いですね。
時間が過ぎるのと一緒で、あっという間に移ろっていきます。
野山は若葉色に染まり、空には鯉のぼりが泳いでいます。こどもの日ですね。
土俵の上では死闘を繰り広げている力士たちですが、土俵を降りれば良きパパ、良き父親って力士もたくさんいます。
ご存じですか。令和4年春場所、初優勝した若隆景は、まだ27歳なのに1男3女のお父さんですよ。
あの優勝の活力源はきっとかわいい子供たちだったに違いありません。
力士たちは、地方場所などで離れている時間が多いこともあってみんな子煩悩なんです。
そんなパパたちの子供とのホットな結びつきをにじますほのぼのエピソードです。
※月刊『相撲』平成31年4月号から連載中の「大相撲が大好きになる 話の玉手箱」を一部編集。毎週金曜日に公開します。

ミルク代のために

子供って不思議なオーラを持っていますね。その母親もまた、すごい、平成27年初場所5日目、西前頭4枚目の常幸龍は日大相撲部の後輩、遠藤(現北陣親方)に押し倒された上、右ヒザを痛めてしまった。
 
相手が相手、負け方が負け方だけにすっかり落ち込んでいると、愛妻の真美さんから、

「ヘコんでいる場合じゃないよ。ウチには赤ん坊がいるんだ。まだ横綱戦がある、横綱に勝て」

ときついハッパをかけられた。
 
男って、女性にも、子供にも弱い。それから2日後の7日目。ここまで全勝だった横綱日馬富士と対戦した常幸龍は、一気に土俵際まで押し込まれたものの、左足1本で残して左から突き落とし、なおもすがりつくところを払い落とした(決まり手は突き落とし)。
 
ホントに初金星を挙げたのだ。しかも、巡りあわせのいいことにこの日は長男の心絆(しんば)君の1歳の誕生日だった。常幸龍は、1年前に2980グラムで産まれ、11キロにまでに成長した息子を目の中に入れても痛くないほどかわいがり、風呂に入れたり、おむつを替えたりするのを最高の気分転換にしていた。この日も真美さんと一緒に両国国技館に応援に来ており、殊勲の星をあげた常幸龍は大勢の報道陣に囲まれると、

「だから、絶対に勝ちたかったんですよ。ミルク代を稼がないといけませんから。もっと勝って、もっと番付を上げないと。これからです」
 
と力強く誓っていた。
 
確かに、これ以上の奮発材はない。ただ、残念なことにこの場所の常幸龍は痛めた右ヒザが悪化して途中休場し、5勝7敗3休と負け越してしまった。ままならないのがまた、相撲というものです。

月刊『相撲』令和4年5月号掲載

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