5月13日より開幕するGLEATのシングルトーナメント「G-CLASS 2026」エントリー選手インタビューの第7弾は、河上隆一が登場。今やGLEATの太陽としてすっかり人気者になった河上だが、生まれ変わった以後はこれといったシングルの実績を残していない。にもかかわらずエントリーされた意味を本人はどう受け止めているのか。そして1回戦の相手・ブラスナックルJUNのブラスナックル対策はできているのか、訊いてみた。(聞き手・鈴木健.txt)――河上“シャーマン”隆一から、GLEATの太陽・河上隆一に生まれ変わった以後、シングルでの実績がないにもかかわらず「G-CLASS 2026」の選ばれし8エントリー選手の中に入りました。
河上 これはですね、まさに“青天の霹靂”というやつです。実績ゼロどころか、それまでの所業を思えばマイナスですよ。にもかかわらず、この河上隆一を入れてくださった会社には土下座してでも感謝を伝えたいですね。私が思うに、今回エントリーされたのは、ズバリ言って“期待”だと思っています。もちろん、それを自分で口にするなんていうおこがましいことはしないですが、わかりやすく言い表すとそうなります。
――具体的に、何に対する期待をされていると思われますか。
河上 GLEATをなんとかしてほしいという、雨乞いの儀式のような声が有楽町の電気ビル北館内から聞こえてきます。これは幻聴などではありません。前世なのかなんなのか、私の記憶の中にはないGLEATへの蛮行をこのトーナメントで実績を出すことによって清算し、あの時に自らの手で暗黒にしてしまったGLEATを明るく照らす役どころを任せたいという意図が、ビッシビシ伝わってくるんです。河上隆一が帰ってきた3月の新宿FACEから、明らかに会場の雰囲気が変わっていますよね。
――はい。
河上 最初は、自分一人の影響でこんなにも変わるものなのかなと半信半疑だったんですが、お客さんもGLEAT所属のレスラーも何かに感化されたかのように明るくなっているんですよ。それはおそらく、河上が明るいんだから俺たちも明るくてもいいんじゃないかという、空気を感じたからだと分析しています。言うなれば、私は野菜や果物が発せられるエチレンガスのようなもの。これからはエチレン河上って呼んでもらってもいいぐらいです。
――なるほど、G-CLASSの明るさ担当ですか。
河上 トーナメントって、どうしても勝負論一本になってけっこうシビアな中でおこなわれるじゃないですか。その中にも明るさを持ち込みたいという意図が会社側にあって、私を入れたのだと解釈しているんです。そして初戦がブラスナックルJUNというね。これはもう、運命のいたずらとしか思えない。正直、このタイミングでの清算マッチは早いのでは?と思ったんです。これまで、私はブラスナックルJUNに負けまくりですよね。
しかもTheSickに対しリング上で「シックハイドロ」と言ってしまったじゃないですか。あれ、隣にいた石田くんがツボにハマって涙目になっていたんですよ。ああいう普段は見られない石田凱士を引き出せるのも、今の河上隆一なのかとも思うんですけど。私は完全に生まれ変わったので、今回が河上隆一の初出場だと思っています。いや、初出場です。過去を引きずるよりも、これからやるべきことに集中した方が建設的です。今、考えているのはブラスナックルのブラスナックル対策です。
――凍結パンチや絶対零度をいかに食らわないようにするか。
河上 あれ、本当に痛いんですよ! 物自体が小さいんでわかりづらいじゃないですか。レフェリーも見えにくいから瞬時にはチェックできないし、何より見えづらいからどれだけ痛いかがお客さんに伝わらない。やられる側としては、やられ損なんですよ。たとえると…箪笥の角に足の小指をぶつけた痛みが頭部に起こる。箪笥の角に小指ぶつけるのって、どんなに鍛え上げたレスラーでもその場でうずくまって悲鳴をあげる痛さじゃないですか。それが頭を襲うことを想像してみてください。想像を絶しますよ。
――それは両肩をスリーカウント分つけられても反応できないですよね。
河上 厳密には反則行為ですから認めたくはないですが、実は非常に合理的なやり方なんですよね、あれ。でも、裏を返せばブラスナックル対策さえちゃんとやれば簡単です。試合開始前のボディーチェックを入念にやってもらう。ブラスナックルJUN本人はもちろん、TheSickのメンバーがセコンドにつくならセコンド全員も厳格にチェック。あとはターンバックルの中もチェックしてもらって、ようやく疑念なくできるかと。なのでこの試合に関しては、いつも以上に時間をかけてレフェリーチェックをやってもらうので、コールから開始のゴングまでお客さんには少々お時間をいただくことになってしまいますが、ご理解いただきたい。
――ただ、そこをなんらかの手で突破してくるのがTheSickでは?
河上 そこも想定済みです。おそらく、総動員で来るでしょう。それを私がどう切り返せるか。最初からわかっていれば、なんらかの策はできると思っています。
――普通に考えれば、人数には人数ですよね。誰か協力してくれる選手はいないんですか。
河上 うーん、ほかの所属選手はG-CLASSに出る人ばかりじゃないですか。そうなると、トーナメントで当たるかもしれない人間を助けようとはならないと思うんですよね。ただし、私が歩くお花畑になった影響で、シャーメンだった頃の悪いイメージが薄れつつあるからワンチャン、助けに来てくれるという可能性はなきにしもあらずだとは思っています。それこそ、所属選手全員が来るかもしれない。そうなったら完全に数でTheSickを上回りますからね。山村、田村、T-Hawkは特定のユニットに所属していないわけだし、なんなら石田くんにも助けに入ってもらいたい。この前(キャプテンフォールマッチ)はうまくいかなかったけど。
――キャプテンフォールマッチ前までは、ブラスナックル選手に対しての憎しみはなく、話し合いという平和的解決を望むと言っていたじゃないですか。これだけブラスナックルで頭をぶん殴られても同じ気持ちでいるんですか。
河上 まことに残念な話ですが、向こうにまったくそのつもりがないようなので。まあ、先ほど清算のタイミングが早いと言いましたけど、こうなったからには今回で本当にケリをつけます。この一騎打ちをもって、ブラスナックルJUNとは終わり。その場でバリカンを使ってモヒカンを刈りあげます。マイバリカンを持っているんで。そうすれば、もとの純朴な青年だった頓所隼に戻るでしょう。
――あれはモヒカンにしているから人が変わったんですかね。
河上 そうですよ。諸悪の根源は、あのモヒカンです。あまりうかつなことは言えませんが、もしかするとあのモヒカンの中に何かが隠されているという説もある。人を狂わせる電磁波が出ている何かが。「魁!!男塾」に出てくる卍丸の刃物みたいな。いずれにせよ、そういう形で誰が見ても決着したと思えるものをちゃんと提示しなければならないと思っています。ブラスナックルJUNとのシングルマッチを1回戦に持ってきたということは、会社もここでの決着を望んでいるということでしょうから。
――今、もっとも旬なシングルマッチのカードを1回戦で組んでしまうあたりからも、それはうかがえますね。
河上 今のGLEATは出し惜しみしている余裕はないですから。常に全力疾走。短距離走を走るペースで長距離を走り続けるようなものです。そこは、私がリング上を明るくするだけではまだ足りない部分じゃないですか。やっぱり、お客様の信頼を積み上げる必要がある。いわば、この1回戦4試合はそのためのマッチメイクだと受け取っております。
――TheSickに関しては今のところどのように映っていますか。
河上 これはある意味、他人事とは思えない部分があります。私も過去に悪いことをしたわけですから、そういう方向に走ることに関しては理解もできるんです。でも、去年までのGLEATの陰を彼らが引きずってしまっていると思うんですよね。だから彼らとの闘いは究極の陰と陽のせめぎ合いなんです。私の陽が彼らの陰を上回って、明るさで包み込むことができるのか。
――わかりました。では、反対ブロックに関しての見方をお話ください。
河上 順当にいけばリンダマン。石田vsKAZMAは正直、見えない部分があります。でも、私の希望はKAZMAです。私は、大きい人とやりたいというのと、あと彼は参謀役的な役割を担っているじゃないですか。正直、もっとできる選手だと思うんですよね。シングルプレイヤーとして今より上にいけるし、身長もあるし、攻撃力もある。だから、本当はもっと評価されていい選手だと数年前から思っていたんです。
その意味でもKAZMA SAKAMOTOを味わってみたいという思いがあるし、でも石田くんとも闘ったら絶対に面白いものになる自信があるし…ただ、一つ言えるのは誰が決勝戦に出てきても河上隆一ワールドにすることができる。だから誰とやっても明るく、楽しくなると思っています。実は、G-CLASSに優勝した上でやってみたい相手がいるんです。
――それは誰ですか。
河上 中嶋勝彦です。彼は昨年優勝者なのに今回出ていないじゃないですか。あと、シャーメン時代にやって負けているそうなんですけど、お花畑・河上とはまだやっていない。だから、優勝した上でディフェンディングチャンピオンと“初の”一騎打ちでやってみたいんですよね。準決勝にしてもT-Hawk、田村ハヤトという名前を見ただけで私自身がワクワクしますから。どっちも対戦したいですよ。あのね…どっちもやりたい。
――2回言いましたね。
河上 T-Hawkも世代的に近いし、彼のプロレスセンスはやっぱりズバ抜けているし、GLEATの中だけでなく日本プロレス界のトップの選手。でも、いまいち欲がないように映るんですよ。彼とはGLEATの旗揚げ戦でシングルマッチをやっているんですけど、その頃と比べるとお互いトシは重ねているんで、同じようにトゲトゲするのは難しいかもしれないけど…時間が経つにつれて尖った石が水に打たれて丸くなるようなもので、丸くなっていくのは人間として当たり前だとは思うんです。でも、丸くなったその先に何があるか知っていますか?
――知らないです。
河上 丸くなったあとは、お花畑になるんですよ。私がそうじゃないですか。トゲがないでしょ。でもですよ、丸くなった石も割れたらまた角ができてトゲになるんです。お花畑もいきなり毒草が生えてくるかもしれない。トゲのある薔薇が生えるかもしれない。その方が面白いじゃないですか。T-Hawkという角ばった石が時とともに丸くなり、お花畑になったあとトゲトゲしい薔薇になったら魅力的だと思うんですよね。
あと田村くん、ド直球ファイターであると同時に彼って器用貧乏じゃないですか。わりとなんでもできてしまう。それって実はすごいことなのに、あまりにできてしまうから印象に残らない。まずはタムラワールドと呼ぶべき自分の絶対領域を持つこと。それにはヘビー級同士の闘いとなる私とやることで開眼するかもしれない。
――今のところ戦績的にはパッとしないという事実こそあるものの、生まれ変わったあとの自己評価はどんなものになるんでしょうか。
河上 調子はいいです。自分が放つエチレンガス、自分が作り出すワールドの領域に自身の能力を上げられている気がするので。あとはシャーメン時代にはなかった応援されることによって、すごいエネルギーを感じます。お客さんの声によって強くなれる…忘れていた感覚が戻りました。どこかへ置いてきてしまった感覚が戻ったことの相乗効果で今、身体能力も上げられているんです。
負けたところばかりがクローズアップされるから、あたかも連敗街道をバク進しているようなイメージで見られているかもしれませんが、言うなればこれまではお花畑になってそれに慣れるための期間だったのかなと。研修期間…まだつぼみなんですよ。それがブラスナックルJUNとの試合で満開になる。
――もしかすると…現在のコスチュームは花が咲く過程を表現したものだったんですか。
河上 ようやく気づいてくれましたか。やっぱりね、180°変えなきゃいけないと思ったんです。中途半端じゃダメ。このコスチュームそのものが花言葉のようなメッセージ性をまとっているんです。
――石田選手からは「大阪のおばちゃんのようなファッションセンス」と言われ、ブラスナックル選手からは「デパートの包装紙かよ!」と心ない言葉を浴びせられましたが。
河上 まったく気にしていないです(爽やかな笑顔)。私はGLEATを明るく楽しくするためならどう思われても、どう見られてもいいと思っています。だってカッコいいプロレスラーはほかにいっぱいいるじゃないですか。同じことをやっても明るくすることはできないですから。そこは変なプライドもないです。デパートの包装紙、大いにけっこう。デパートの包装紙って、人を幸せな気分にするじゃないですか。
贈り物を受け取った時に、華やかな包装紙に包まれたものを手にした瞬間の高揚感を思い出してください。誰もが一度は経験しているでしょう。あれは本当に、顧客のことを考えた良い文化だと思うんです。河上隆一という包装紙に包まれた多幸感をファンの皆さんに味わってもらえたら、あのコスチュームにした甲斐があるというものです。
――新たな得意技(フェースバスター)には「ストロベリーエレファント」という名前をつけられましたね。
河上 実は、さらに大きいストロベリーエレファントもいるんです。それを決められたら、誰が相手でも確実にスリーカウントを獲れます。ビッグストロベリーエレファント…略してBSEが見られる日を楽しみにしていてください。やっぱりプロレスラーは常にアップデートされる姿を見せるべきだと私は思っているんです。もしかすると、このお花畑も…。
――コスチュームもヴァージョンアップすると。
河上 これ、春夏用なんで秋口になった頃に秋冬用を披露するかもしれません。季節モノではなく、一年中咲き誇る河上隆一という名のお花畑によって皆さん、明るくなってください!