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2026-05-13

【相撲編集部が選ぶ夏場所4日目の一番】四股だけじゃない! 再入幕2場所目の琴栄峰が力強く4連勝

パワー自慢の金峰山との引きつけ合いから勝機をつかみ、最後は右下手投げで転がして初日から4連勝とした琴栄峰。力強い取り口に、覚醒の予感も漂ってきた

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琴栄峰(下手投げ)金峰山

こんなに力強い相撲の力士だったか。
 
パワー自慢の金峰山に左上手を許し、右四つがっぷりでの引きつけ合いに持ち込まれながら、右からの下手投げで投げ捨てた。
 
今場所が再入幕して2場所目の琴栄峰だ。足を高く上げて3秒停止する美しい四股で幕内前半戦の土俵を盛り上げる力士として知られているが、そのことに象徴されるように、これまでは柔らかさ、しなやかさに持ち味があると感じられる力士だった。
 
しかし、このところ着々とパワーをつけ、下半身や肩のあたりの筋肉もガッチリしてきた琴栄峰は、もはや四股だけが持ち味の力士ではなくなっていた。この日の取組で力強さも証明し、初日から4連勝。大関霧島、小結若隆景と並んで、たった3人となった幕内の全勝力士の一角を占めることになった。
 
この日の相手の金峰山には、初顔合わせの先場所、引き落としで勝ってはいるが、これは立ち合い変化によるものなので参考外。この日は真に力で上回れるかどうかが試される相撲になった。
 
突っ張り合いになったり、まともに組み合えば、やはりパワーでは金峰山だけに、琴栄峰としてはモロ差しに入りたいところ。立ち合いは「相手を驚かせようとしてやった」と、ちょっと手を相手の目の前に出すようにして小細工したがこれは不発。そのあとモロ差し狙いにいったが、入ったのは右だけで、すぐに金峰山に右をこじ入れられ、上手は取れたが相手にも許し、右四つになった。

下手から起こして胸を合わせようとする金峰山。琴栄峰は相手の上手を切りに行くが切れず。ただ、四つ身の形としては、琴栄峰は下手を深く差して金峰山は遠い上手、琴栄峰は浅い上手で、琴栄峰のほうが少し腰を低く構えることができていた。

そこからは引きつけ合いになるが、琴栄峰はヒザを使ったり、左右から揺さぶったりと、完全に胸を合わされる前に動き続け、相手の腰が少し伸びる瞬間を作ることに成功。この機を逃さず、右からの下手投げで力強く金峰山を転がした。

「投げはたまたまですね。右を差して左上手を取って頭をつけたかったが。相手の突きを封じられたのがよかった」

と琴栄峰。初日から4連勝は十両時代の昨年5月場所以来。入幕してからはもちろん初めてで、今場所が覚醒の場所になりそうな雰囲気も漂う。昨年は、この琴栄峰が入幕してきたことが兄の琴勝峰の尻に火をつけ、その覚醒の一要因ともなったようだが、この琴栄峰には、「新入幕には負けたくない」と、埼玉栄高で同級生だった若ノ勝の新入幕が大きな刺激になっているよう。若ノ勝も今場所元気だが、二人で競い合って番付を上げていってほしいところで、幕内下位に芽吹いてきた20代前半のフレッシュな力はこの先が何とも楽しみ。

基本的にはソップ型の力士だけに、この日も最後は下手投げだったことに表れているとおり、まだ中に入っての下手からの芸が多く、相撲が小さい印象もある琴栄峰だが、

「巡業で山響親方から四股と腰おろしを教えてもらったのがよかった。足腰が強くなった。お尻も大きくなって、締まってきたと言われるので、強くなったのかな」

と、体にも手応えを感じているよう。さらに力がついてくれば、上手から相手を挟みつけて出るような相撲も取れるようになるはずで、そうなったときが、今場所新関脇となった兄に勝るとも劣らない素質が開花する瞬間になるような気がする。

文=藤本泰祐

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