この写真は、平成24(2012)年9月場所のポスターだ。それまでの本場所のポスターといえば、横綱らが大写しになっているものが定番。当時、協会内の担当者が代わったことがきっかけでデザインが一新され、このように芸術性がより重視されたものが出来上がった。
※写真上=「イメージ狙い」の構図中心の写真だが、相撲の“職人”たちがここから読み取るものは実に大きい
写真:月刊相撲
長い人生には、誰にもエポックメーキングな瞬間があり、それはたいてい鮮やかな一シーンとなって人々の脳裏に刻まれている。
相撲ファンにも必ず、自分の人生に大きな感動と勇気を与えてくれた飛び切りの「一枚」というものがある――。
本企画では、写真や絵、書に限らず雑誌の表紙、ポスターに至るまで、各界の幅広い層の方々に、自身の心の支え、転機となった相撲にまつわる奇跡的な「一枚」をご披露いただく。
※月刊『相撲』に連載中の「私の“奇跡の一枚”」を一部編集。平成24年3月号掲載の第2回から、毎週火曜日に公開します。
力士の顔が写っていないこともあり、「これは誰だろう?」と興味を持った。誰なのか分かれば、記事のネタになるだろうとの思いもあった。
モノクロ写真では分かりにくいが、左の力士の締め込みは明るめの紺で、上手を1枚取っている。右の力士は紫の締め込みで下手が深い。主なヒントはこれだけ。しかし、角界関係者にこの写真を見せながら探っていくと、話は意外な広がりをみせた。
ネットなどでは当初、「左は朝赤龍、右は常幸龍」との説が根強かった。常幸龍に聞くと「僕じゃない。ヒザにテーピングはしてませんから。益荒海関っぽくないですか?」。テーピングのあるなしも、ヒントになることが分かった。朝赤龍は「自分じゃないです。貴乃花対舞の海じゃないかな?」。協会広報に聞いたが、そもそも撮影時期があいまいで、現役力士かどうかも分からなかった。
琴欧洲(現鳴戸親方)は特に興味を示してくれた。稽古後に話を聞こうとすると、ちゃんこの手を止め、力士名鑑を見ながら推理を始めた。結論は「右は、白乃波か宝富士。左は、豊真将か大道」。研究熱心な琴欧洲らしく、各力士のテーピングのあるなしも根拠にしていた。
豊真将(現立田川親方)はこう教えてくれた。「(左の力士は)似てるけど、僕は右手の指にテーピングをするし、こういう相撲を取らない。あそこまで差させる相手はいないし。自分ではない、というのが結論です」。この体勢から考えられる取り口もヒントになりえたのだった。
30人くらいに話を聞いただろうか。結局、答えを断言してきたのは若い衆だった。高田川部屋の神風力(のちの大神風)、鶴乃湖(ともに現在は引退)、峰崎部屋の白龍(のち大空、引退)の3人は「右は白乃波、左は保志光」と明言した。特に白龍は、こう説明した。「白乃波はお尻がきれいで、腕が太い。保志光は、尻の肉の付き方が、こんな感じなんです。入門した時から、よく稽古しましたから。保志光は右脇が甘いから、よくこうやって(下手を)取られるんですよ」。
両者の対戦は4度ある。精査していくと、平成20年5月場所千秋楽、白乃波が保志光を寄り切った相撲が有力視された。当誌編集部の門脇利明氏にデータベースを調べてもらったところ、ポスターと同じ場面の写真を発見。門脇氏は自宅で映像も確認してくれた。皮肉にも、八百長問題がきっかけで引退した2人が、起用されていたのだ。
当時、答えにたどり着いた喜びもあったが、話を聞いた力士の相撲観、観察眼に触れることができた面白さも同じくらい感じられた。
芸術性を重視した協会のポスター作りは現在も続いている。その後も「これは誰か?」という調査は何度か続け、そのたびに興味深い話を聞けた。ネットでは「ポスターの謎」で検索するとツイッターのまとめが見つかるので、関心ある方はぜひ読んでいただきたい。
語り部=佐々木一郎(日刊スポーツ)
月刊『相撲』平成29年2月号掲載
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