太平洋戦争終結から70年、戦争を経験された多くの方々が、これまで「あの熱くけだるい夏の日」と表現されてきた〝終戦記念日〟がまたやってくる。私自身は戦争をまるで知らない時代の生まれだが、戦争の悲惨さ、理不尽というものを、他人事でなく感じている。
※写真上=天下の幕内力士豊錦の出征記念写真。中央のたくましく筋肉質でハンサムな人物が豊錦。当時の日米状況をにらみ、兵役免除も狙ってわざわざ日本国籍を取得したのに、幕内を1場所務めただけで赤紙を受け取るはめに……
写真:月刊相撲
長い人生には、誰にもエポックメーキングな瞬間があり、それはたいてい鮮やかな一シーンとなって人々の脳裏に刻まれている。
相撲ファンにも必ず、自分の人生に大きな感動と勇気を与えてくれた飛び切りの「一枚」というものがある――。
本企画では、写真や絵、書に限らず雑誌の表紙、ポスターに至るまで、各界の幅広い層の方々に、自身の心の支え、転機となった相撲にまつわる奇跡的な「一枚」をご披露いただく。
※月刊『相撲』に連載中の「私の“奇跡の一枚”」を一部編集。平成24年3月号掲載の第2回から、毎週火曜日に公開します。
それは日米のはざまにあって、あたらその非凡な才能をすり減らされ、歴史のかなたに置いていかれようとしている一人の“異邦人”力士の存在によってである。
ハワイ生まれの名力士・高見山大五郎の名前は、初の外国人幕内力士としてあまりにも有名だが、実は同じ米国籍で幕内になった男が、すでにいたのである。
戦時中の一時期、彗星のように輝いたその人の名は豊錦喜一郎(出羽海部屋)、血も顔も日本人の日系二世だった。
日米間には複雑な歴史が横たわっているが、1890年~1910年ごろにかけては、移民として日本からアメリカに渡る人も多く、その数15万人に達するほど、両国関係は良好だった。アメリカに渡った一世たちはかの地になじむ一方、日本文化をこよなく敬愛し、日本人としての誇りを持ち続けた。そんな両親のもとアメリカで生まれ、育った豊錦は米国籍。
豊錦こと尾崎喜一郎はアメリカ・コロラド州の生まれ(大正9年2月3日)。農業移民(福岡県築上郡出身)だった父喜代太郎さんの次男(7人兄弟)として、西部劇を思わせる自然環境のなか、厳しく育てられた。そして彼が17歳のとき、その立派な体格と目の輝きが渡米した本願寺のお坊さんの目に留まり、憧れの大相撲の世界への挑戦が決まった。
昭和12(1937)年3月、来日すると、各相撲部屋から注目を浴び、玉錦、双葉山、前田山といった錚々たるメンバーから自分のところに来いと誘われたほどだった。しかし結局福岡の代議士の仲介で出羽海部屋へ入門、13年1月初土俵。
187センチの長身、体のバネに加えて、父親に厳しく仕込まれた大和魂、加えて稽古熱心、品行方正。
豊錦が親方や兄弟子に厳しく仕込まれたのは突っ張り。豊錦はそのうちに左四つ、吊り、寄り、右上手からの投げなど勝ち味の早い取り口を身に付けた。以降負け越し知らずで18年1月新十両。その十両も3場所で突破し、19年5月には新入幕(西幕内20枚目)を果たして、見事勝ち越し。
だが、途中太平洋戦争が始まるとアメリカは日本の敵国となり、特高警察の監視を受ける始末に。そこで親方に日本国籍を取るように勧められ、18年夏ごろ取得。しかし兵役免除はならず、19年5月新入幕で勝ち越しの星を挙げたところで兵隊検査が待っていた。ただちに応召。
戦後の20年ようやく復員したが、ここで体力の衰えと自分の生活を照らし合わせて、相撲を取らぬまま、廃業を決意(20年11月)したのだった。西部劇の世界からやってきて、大関をも期待された快男児が、戦争に翻弄されながら生涯一度の負け越しもなく廃業という数奇なストーリーがこのとき定まった。
その後通訳、東京・江東区での旅館経営を経て、父親の故郷である福岡県に転居。平成10年9月26日日本人として波乱万丈の生涯を終えた。
アメリカにいるときは白人世界に気を遣い、日本の中でも二世としての疎外感、つまり「異邦人」としてのジレンマを抱いたまま戦った心根はどのようなものだっただろうか。
語り部=小笠原和子(フリーディレクター)
月刊『相撲』平成27年7月号掲載
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