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2026-08-18

【連載 泣き笑いどすこい劇場】第40回「プライド」その2

平成14年秋、復活の場所の初日、横綱貴乃花は、新小結の高見盛を相手に頭から当たる相撲を見せ、最後は寄り切り、プライドを捨てての快勝だった

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女は愛に生き、男はプライドに生きる。
そう言いませんでしたっけ。
確かに、もっとほかに楽な道がいっぱいあるのに、男ほど生き方にうるさい生き物はいません。
とりわけ、勝負に生きる男たちはそうです。
だから、人一倍努力もするし、どんな試練にもジッと歯を食いしばって耐えるんです。
つらいですよね、男って。
でも、だからこそ、人々を引きつけてつけてやまない魅力にあふれていることも確かです。
そんなプライドにこだわる土俵上の男たちのエピソードを集めました。
※月刊『相撲』平成22年11月号から連載された「泣き笑いどすこい劇場」を一部編集。毎週火曜日に公開します。

捨てる勇気も必要

ケガや病気などで窮地に追い込まれた力士が再び立ち上がり、勢いを取り戻すのは想像以上の難行だ。平成13(2001)年夏場所14日目、横綱貴乃花は大関武双山(現藤島親方)戦で右ヒザを亜脱臼するなど大ケガを負い、翌場所から翌年の名古屋場所まで7場所連続して全休している。そんなひどいケガを負いながら、千秋楽の優勝決定戦で横綱武蔵丸(現武蔵川親方)を左からの上手投げに破り、22回目の優勝を決めた一番は“鬼の形相の優勝”と呼ばれていまも語り草だ。

貴乃花がこの長い休場に終止符を打ち、ようやく土俵に戻ってきたのは平成14年秋場所。注目の初日の相手は東小結の高見盛だった。いかに多くのファンがこの復帰を心待ちし、注目したか。貴乃花が登場したときのテレビの瞬間視聴率が27.6%にハネ上がったことでも分かる。

結果は貴乃花の快勝。頭から当たると、とても1年半近いブランクがあったとは思えないような力強い攻めで寄り切った。469日ぶりに白星を挙げた貴乃花は支度部屋に引き揚げてくると、フーッと大きく息を吐き、

「歓声? ちょっと夢中でしたから、分からないですね」

と険しい顔のまま、話している。まるで天国から地獄に突き落とされたような、これまでの試練があまりにも大きかっただけに、1つ勝ったぐらいではとても喜べなかったのに違いない。この一番を見た平幕優勝2回の琴錦親方(元関脇、当時は準年寄、現朝日山親方)は改めて貴乃花の偉大さを感じ取り、こう絶賛している。

「(自分と)横綱とは立場が違いますが、(復活するうえで)もっと大切なのはプライドを捨てて初心に戻れるかどうか、なんです。自分は十両に落ちたとき、頭からいけずに胸からいって勝てなくなり、引退に追い込まれた。きょうの横綱は、相手は新小結なのになんのてらいもなく、頭から当たっていった。さすがですよ」

プライドはなんともやっかいなもので、命がけで守るだけでなく、ときには思い切って捨てる勇気も必要なのだ。この場所の貴乃花は、2日目以降も気力を振り絞ったような相撲で勝ち進み、またまた武蔵丸と千秋楽相星決戦を繰り広げたが、惜しくも敗れ、奇跡の復活優勝はならなかった。

月刊『相撲』平成26年2月号掲載

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