キャリアを重ねるとともにアントニオ猪木の必殺技は変わっていった。日本プロレス時代はコブラツイスト、大一番限定で繰り出すジャーマン・スープレックスや卍固め、モハメド・アリ戦を経て開発した延髄斬り、そして一瞬にして相手を絞め落とすスリーパーホールド。いずれも印象的なショットが残されているが、半世紀以上にわたって猪木を撮り続けてきた原悦生カメラマンは、さまざまな角度から一つの技を狙っていた。なかでも“格闘芸術”にまで昇華させたのが延髄斬りだという。(文中敬称略)
アントニオドライバー、コブラツイスト、ジャーマン・スープレックス、卍固め、弓矢固め、バックドロップ、延髄斬り、魔性のスリーパー……これはアントニオ猪木が好んで使用してきた必殺技の変遷である。そのなかでもフィニッシュ技として最も多用されたのは延髄斬りではなかったろうか。
アントニオドライバーは自身への負担もあって早々に封印。その後、日本プロレス復帰とともにコブラツイストが定番となった。それでも新技には意欲的だった猪木は、発展技として卍固めを開発した一方で、師であるカール・ゴッチから伝授されたジャーマン・スープレックスを習得。ただ、いずれも大一番で使用するプレミアム感が強い技でもあった。
“世紀の凡戦”と酷評されたモハメド・アリ戦を終えた猪木は、再戦に向けて動いていた。15ラウンド闘い抜いた一戦ではスライディングしながら相手の足を狙って放ち続けた蹴りで苦しめた。それをスタンドから放っていったのがアリキック。さらに一撃必殺に昇華させるべく開発されたのが延髄斬り。70年代後半から80年代に入ると、フィニッシュ技として多用していった。
コブラツイストや卍固めでは技を決めると見得を切るように締め上げていった。バックドロップやブレーンバスターでは大きく弧を描いて投げるため、見栄えがする技だった。パンチも弓を引くような構えから放ち、表情とともに感情が伝わってきた。
橋爪哲也
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