close

2026-10-08

【陸上】駒澤大、藤田敦史監督 指導者人生、第3章幕開けの駅伝シーズン コミュニケーションを高め、土台づくりと自信をつけることを重視

監督に就任して4年目となる駒澤大・藤田敦史監督。夏合宿を経て、駅伝シーズンへの手応えを得た(写真/常盤真葵)

今年も10月12日の出雲駅伝を皮切りに、11月1日には全日本大学駅伝、1月2、3日には箱根駅伝と学生三大駅伝が始まる。昨年度、出雲は5位、全日本を制したが、箱根は6位となった駒澤大。今年、藤田敦史監督が就任4年目を迎え、全学年が藤田体制になってからの選手となった。指導者人生、第3章幕開けとなる戦いが始まる。

今季はコミュニケーションを重視

監督として4年目の大学駅伝シーズンを迎える駒澤大、藤田敦史監督に出雲駅伝を直前にした気持ちを問うと、こんな答えが返ってきた。

「今年は指導者人生の新しい章が始まったという感じです。コーチとして過ごした時間が第1章、そして2023年に監督になってからが第2章。そして今年、自分が監督になってから入った選手たちが4学年すべてでそろったので、ここからが第3章と言えます。今は駅伝シーズンを前にして楽しみな気持ちです」

佐藤圭汰(現・NIKE)や山川拓馬(現・トヨタ自動車)など昨年まで駒澤大を支えた有力世代がこの春に卒業。戦力の再構築を余儀なくされたが、今季は選手とのコミュニケーションを増やしながら指導を進めてきた。
「言わないでも伝わるだろうと思っていたことが、実際、選手に伝わっていないことが多くあると気づきました。同じ練習でも選手が目的をしっかり理解して取り組むのと、そうでない場合とでは成果が違います。今年はそれを身をもって感じました」

日本インカレ10000mで28分23秒41の6位に入り、5000mでも今季大きく自己ベストを更新した植阪嶺児(4年)は藤田監督が「夏までにもっとも成長した」と名前を挙げる選手。その植阪自身も「以前は出されたメニューをこなすだけでしたが、今年は監督と相談し、必要なことは何かを自分のなかに落とし込んでから練習に取り組むようになりました。スピード練習中心に組んで、レースペースの余裕度を高めて試合に臨むことで結果につながっています」とコミュニケーションの促進が競技力につながったとの認識を示す。

村上響(4年)はキャプテンとして藤田監督との対話を率先して行っており、その変化を間近で見てきた。
「選手と監督との間のコミュニケーションを重視したいという意見が僕たちの学年から上がったんです。入学したときから藤田監督の指導を受けている自分たちが最上級生になったからこそ、それができると思っていましたし、実際、自分も監督と会話する機会は増えました。監督も選手目線に立ってくれていて、合宿の進め方などでも、自分たちの意見を取り入れていただいています」

それによりチームの雰囲気は大きく変わったと、誰もが口をそろえる。

大学ラストシーズンを迎える4年生の村上(左)と植阪(右)。共に監督とのコミュニケーションが増えたことでの変化を実感している(写真/常盤真葵)
大学ラストシーズンを迎える4年生の村上(左)と植阪(右)。共に監督とのコミュニケーションが増えたことでの変化を実感している(写真/常盤真葵)


夏は土台を作り、自信をつける練習を実施


加えて今年は泥臭く走り込んで土台をつくることに力を入れてきた。それは自身が大学生だった当時の駒澤大の姿がひとつのモデルとなっていると藤田監督は話す。

「突出したエースがいない今のチームを見たとき、私自身が強くなったときのやり方に戻した方がいいと考えました。しっかり走り込んで、土台さえつくれていれば、多少走りが崩れても戻せますし、チーム全体としても、それを徹底することで、誰が抜けても戦力低下を最小限に抑えることができます。また夏合宿では自信をつけることを目指しました。今年は有力世代が抜けただけでなく、駅伝経験がない選手も多く、また前半戦では早大、中大勢がトラックで好記録を出しています。“自分たちで本当にやれるんだろうか”という雰囲気を感じましたので、多少、設定タイムを落としても、メニューを全員がやり切れる夏合宿にしようと考えました」

練習メニューもシンプルなものにし、全員で最後までやり切ることを重視。その結果、夏の全体合宿で行った練習ではほとんどのメニューをすべての選手が遅れることなく完遂した。「設定ペースを落とそうと考えていた部分も、結果的には例年と変わらない設定で行うことができました。その要因は意識の面での変化でしょう。それぞれの選手が“自分が離れないことでチームは強くなる”と強い気持ちで臨んだ結果だと思います」と監督は選手たちの成長に手応えを口にする。

振り返れば、1995年、大八木弘明総監督が駒澤大のコーチに就任した際、徹底的な走り込みに加え、勝つことで自信を植え付けたいと、箱根の復路優勝、出雲や全日本の制覇を経て、段階的に常勝軍団へと育て上げた。藤田監督の指導者人生第3章は、師でもある大八木総監督の指導に近い形へ原点回帰したのである。

大学駅伝シーズンに掲げる目標はすべて3位以内

その一方で新たな取組みも導入している。9月に長野県菅平高原で選抜メンバーを集めて行った合宿では、選手の意見を取り入れ、これまでやってこなかったロードのスピード練習のメニューも取り入れた。
「選手から夏合宿はロードをカーボンシューズで走る機会が少ないという声が上がったことがきっかけです。今年は駅伝経験が少ない選手が多いので、駅伝を見据え、練習から本番と同じ感覚をつかませることも必要と思って実施しました」

監督と選手間のコミュニケーションも重要視された今夏の合宿ではロードでのスピード練習も実施した。写真は取材時の距離走のもの(写真/常盤真葵)
監督と選手間のコミュニケーションも重要視された今夏の合宿ではロードでのスピード練習も実施した。写真は取材時の距離走のもの(写真/常盤真葵)

夏を終え、土台づくりはおおむね成功。9月27日に行われた日本体育大学長距離競技会では5000mで7人が自己新をマーク。特に1、2年生の台頭が目についた。
「夏合宿後、レースに出ずに出雲駅伝に向かう者もいますが、この記録会にも練習の過程でコンディションを合わせずに出た者、そしてしっかり調整し、記録を狙わせた者と3つに分けています。この記録会に合わせない選手はピークを出雲に向けている選手であり、記録を狙ったものは夏の成果を結果につなげ、自信をつけさせるためです。どの選手もおおむね、満足行く走りができたと思います」

調整することなくこの記録会を走った上岡煌(2年)は13分53秒20の自己ベスト、鈴木大翔(1年)も自己ベストに迫る13分55秒79を出し、メンバー入りに大きくアピール。またここで記録を狙った池谷陸斗(1年)は2人を上回る13分47秒09でこちらも自己新を出し、夏の強化がスムーズに進んでいることを示した。出雲駅伝は過去に大学駅伝未出走の選手を多く起用することを藤田監督は明言しており、上岡、鈴木は大きくそこに前進したと言えるだろう。また「ほかの選手も自信をつかんだはず」と藤田監督は手応えを口にしており、秋の最初のレースは幸先の良い滑り出しとなった。

この大学駅伝シーズンに掲げる目標はすべて3位以内。出雲、全日本と戦いながら、夏に積み上げた土台の上にさらなる強さを積み上げ、箱根では頂点を狙っていくつもりだ。
「その過程のなかで私自身がまた新たな経験をしたり、選手の特徴をさらに細かく把握できるでしょう。そうしたことをすべて指導に生かしていくことが重要です。今後はどんどんチームは良くなっていくでしょうし、良くしていかないといけないですね」

藤田監督、指導者人生第3章の幕開け。駒澤大の戦いぶりに注目だ。

※駒澤大夏合宿リポートは陸上競技マガジン11月号に掲載

文/加藤康博 写真/常盤真葵

PICK UP注目の記事

PICK UP注目の記事



RELATED関連する記事