
男子100m平泳ぎの絶対的王者であるアダム・ピーティ(イギリス)。リオ五輪男子100m平泳ぎ金メダリストで、記録面でも世界歴代2位の選手に1秒以上の大差をつけ、東京五輪でも圧倒的な優勝候補だ。
写真上/昨年の世界選手権でアダム・ピーティは100m平泳ぎの準決勝で56秒88の世界新を樹立した(写真◎Getty Images)
ピーティといえば強靱な身体を武器にしたパワフルな泳ぎが思いつく。ただ、筋力トレーニングや水中での練習と同じくらい、「メンタルトレーニング」を重要視しているのだという。
「練習で強くても、レースで結果が出ない選手は、肉体とメンタルとのバランスが取れていないことが多い。僕はそれに気づいた。メンタルも肉体と同じようにトレーニングしなければバランスが取れない。健全な精神は健全な肉体に宿る、という昔からの教えを信じているんだ」
2015年に男子100m平泳ぎの世界新記録を樹立し、2016年リオ五輪は絶対的な優勝候補として臨んだ。オリンピックの優勝候補に挙げられると、本番だけではなく、常日頃から期待という名のプレッシャーを受けることになる。それは、想像では及ばないものだろう。その中でしっかりと結果を残し、金メダルをつかんだ。
ピーティはプレッシャーと向き合い、レースで力を発揮するために、取り組んでいることがある。
「プールサイドでみんなが見るアダム・ピーティはアダム・ピーティなんだけど、それはまた違うアダム・ピーティでもある。僕はそれを “アリーナスキル”と呼んでいるんだ」
少し、抽象的な概念のようにも感じるが、詳しく聞くとわかりやすく、ふに落ちる。
「レース会場では、『もうひとりのアダム・ピーティ』を立てているんだ。普段、家族や友人と楽しく話をしている自分と、レース会場で勝負に徹している自分を同一視すると、そこに食い違いが生じてしまい、レースにも影響が出てしまう。だから、アリーナ(プールサイド)ではグラディエーターになりきるために、もうひとりの自分を立てるんだ」
オンとオフとのスイッチを切り替える、という話はよく聞く。ただ、ピーティは、しっかりと、確実に切り替えるために、「この『アリーナスキル』を身につけるために、これまで5年ほどかけて、スキルのひとつとしてトレーニングしてきた」のだという。想像もつかないようなプレッシャーの中で戦い続け、結果を出し続けるためには、こうしたメンタルの強化も必要不可欠なのだろう。
※スイミング・マガジン8月号(7月10日発売)ではアダム・ピーティのロングインタビュー前編を掲載。そのメンタル面に迫っているので、ぜひ、ご覧ください。
インタビュー/望月秀記 構成/スイミング・マガジン編集部
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