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2020-10-08

日本の育成年代でも弊害なく取り組める「ゲームモデル」を25歳のJFL監督が紹介:前編

JFLの奈良クラブで采配を振るう25歳の林舞輝監督

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理念や理想の部分と現実のピッチ上での課題を折り合わせてつくるのがゲームモデル



――大から小の流れですね。具体的な例を挙げてください。

林 以前にサッカークリニックに載せてもらったスローインの基準(2020年5月号参照)が典型的な例になります。いわきFCとの今季JFL開幕戦で、ウチの選手たちは「スローインはピンチ」、「スローイン(の際)はネガティブトランジション(が起きる。攻撃から守備への切り替え)」という基準を統一して持っていたので、すぐに奪い返して先制点を生みました。

 ゲームモデルは、会社で言えば、経営理念とビジネスモデルをかけ合わせたものでしょうか。どれほど崇高な理念があっても、お金を稼げる仕組みがなければ、倒産するしかないわけです。サッカーチームも同じで、「こういう理由で、こんなサッカーをしたい」という思いがあっても、勝つ見込みのない仕組みであれば、絵に描いた餅になり、監督はクビになるでしょう(笑)。

――「理想のサッカー」と「勝つサッカー」は違うということですね。

林 違います。企業が「お金を稼ぐ」ことばかりに特化すると、「俺たちの会社が存在している意味は何なのか?」という風になってしまうと思います。つまり、理念や理想の部分と現実のピッチ上での課題を折り合わせてつくるのがゲームモデルです。それは勝つための仕組みでなければいけませんし、原則同士が矛盾していないことが重要です。

――このチームが勝つためにはどういうゲームモデルがいいのか、という要素を外すことはできません。

林 サッカーというゲームの目的は勝つことであり、理想や理念と勝つための方法とを組み合わせてつくるのがゲームモデルになります。そして、ゲームモデルができれば、それを実現するには「何が足りなくて、どういう要素が必要か」という考えになり、練習メニューが決まっていきます。これが逆になることはないと思います。

プロフィール



林舞輝(はやし・まいき)
1994年12月11日生まれ、東京都出身。グリニッジ大学(イギリス)でスポーツ科学を修了。在学時にチャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチを経験した。2017年にポルト大学スポーツ学部の大学院に進学すると同時に、リスボン大学(ともにポルトガル)でジョゼ・モウリーニョが責任者と講師を務める外部コースを受講。また、ボアビスタ(ポルトガルの1部リーグ)のBチーム(U-22)でアシスタントコーチの任にあたった。18年に奈良クラブ(JFL)のGMに就任し、19年はコーチ兼任。20年から25歳の年齢で監督として指揮する

取材・構成/川端暁彦

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