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2020-10-20

【陸上】東京五輪マラソン代表・鈴木亜由子が11カ月ぶりのレース復帰に感じたこと

昨年のクイーンズ駅伝(写真)以来、11カ月ぶりのレース復帰となった鈴木 写真/JMPA

東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子(日本郵政グループ)が、11カ月ぶりにレースに復帰。納得できる記録ではなかったものの、年初の故障の影響により長いブランクとなっていたなか、中盤以降のペースアップに再始動に手応えを感じていた。

思いきり走り切れる喜び

鈴木は、10月17日に神奈川県秦野市で行われた第197回東海大長距離競技会5000m2組に出場し、15分57秒16の1位でフィニッシュした。

「まずはケガ明け、ようやくトラックレースの舞台に戻ってこられたことをとてもうれしく思っています。そして今日の復帰までの期間、私を一生懸命に支えてくださった周囲の方々には心から感謝したいと思います」と、チーム関係者を通じてコメントした(以下、鈴木コメントは同じ)。

今年1月末に故障をして以降、やっと思い切り走ることができた。レースに出場したこと自体をうれしく感じたのは、鈴木の偽らざる心境だったろう。

だが、レースを見ていたメディア関係者によれば、フィニッシュした直後の表情は「苦笑いでしたね。イヤーっていう感じ」だったという。

レース5日ほど前に高橋昌彦監督に取材をした際は、「当初は(1000m毎のペースは)3分10~12秒かなと思っていましたが、練習の調子が上がってきたので3分8~9秒を考えています」と話していた。3分12秒なら16分00秒、3分8秒なら15分40秒でのフィニッシュになる。15分57秒16は不満の残るタイムだった。

鈴木はペースや今後への展望を次のように話した。

「今日のレースについては、前半ペース感覚が掴めず、思ったようにペースが上がりませんでした。2000m以降ようやく予定していたペースで走れましたが、まだコンディションは6割程度なので、これからまたしっかり練習を積み、まずはチームで挑む来月のクイーンズ駅伝に臨みたいと思います」

中盤以降のペースアップに手応え

現地の長距離関係者から得た、4000mまでの1000m毎の通過タイムは以下の通り。

1000m:3分16秒6
2000m:6分28秒8(3分12秒2)
3000m:9分39秒8(3分11秒0)
4000m:12分49秒2(3分09秒4)
5000m:15分57秒16(3分08秒0)

序盤はチームメイトたちと交互にレースを引っ張った。スタートから鍋島莉奈が500m付近から鈴木が前に出たが、上記のようにペースは上がらない。2000mで大西ひかりが先頭に立ってペースを上げ、3400mで鈴木が再度先頭に立って3分10秒を切るところまで上げられた。

前半はペースメイクの巧拙ではなく、鈴木の動きが明らかに良くなかった。

今大会はコロナ禍の影響で、鈴木にもチーム関係者にも、レース後の取材ができなかった。推測になるが、理由ははっきりしている。暑さを得意とする鈴木にとって、この秋一番の冷え込みと雨が難敵だったのだ。昨年までは足首から下のケガが多かったが、その多くは寒い時期に発症している。東海大ではいつものアームウォーマーに加え、珍しくヒザまでのタイツを着用していた。

もうひとつ考えられるのは、レース感覚が鈍っていたことだ。練習はしっかりできていても、レース出場間隔が空きすぎたため、レースペースにつなげることができなかったのかもしれない。

久しぶりに思い切り走れる機会だったのに、思いどおりの内容とはならなかった。そんな心境が鈴木のフィニッシュ直後の表情に現れたように思う。

強いて明るい材料を指摘するなら、3000m以降は予定していたペースにまで上げられたこと。そして、復帰戦で想定以上のタイムを出さなかったことだ。想定以上のタイムは潜在的に、想定を大きく超える負荷をかけることも多い。

不満の残るタイムでの復帰は、好スタートだったと言えなくもないだろう。

翌日には同大記録会で3000mに出場し、9分19秒07で4組2着をマーク。

鈴木が再び、オリンピックに向け走り始めた。

陸上競技マガジン 11月号 | BBMスポーツ | ベースボール・マガジン社

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文/寺田辰朗

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