宝富士(突き落とし)隠岐の海 9日目は熱戦が多く、どの一番にしようか迷ったが、ベテラン同士の意地がぶつかった隠岐の海-宝富士戦を取り上げることにした。
35歳の隠岐の海と33歳の宝富士は、これまで21回対戦して宝富士が12勝9敗とややリード。ともに左四つだけに、先に上手を取れるかがカギになる。
予想どおり、当たってすぐに左四つに組み合った両者。ともに上手が取れず、おっつけながら手を伸ばすも、廻しにかからない。隠岐の海は左下手を取ったが、宝富士は下手も取れず苦しい体勢で我慢。
長い相撲となり、1分過ぎに隠岐の海が強烈におっつけてから上手をつかむと一気に前に出た。土俵に詰まり、絶体絶命の宝富士は右から捨て身の突き落とし。一瞬早く、隠岐の海の体が落ちた。隠岐の海にとっては、上手が一枚廻しで伸びてしまい、力が伝わり切らなかったのが誤算だった。
ヤレヤレという表情で引き揚げてきた宝富士は、「褒められた相撲じゃないけど、不利な体勢になっても粘ってあきらめずにいったのがよかった。最後は必死ですよ。先に上手を取られちゃって、突き落とししかないと思いました」と汗をぬぐう。
これで1敗を守り、勝ち越しも決めた。「だいぶ早い勝ち越しなので、自分でもびっくりです。場所前にしっかり稽古できたのがよかった。体が動いています。ほぼ毎日、照ノ富士関と三番稽古をしていたんです」と語る。コロナ禍で出稽古ができない中、復活した元大関とぶつかり合えたのは、いい稽古になったことだろう。
2歳になった長男の存在も発奮材料で、「いろいろわかってきて、僕が勝つと『ヤッター!』と喜んでくれるそうです。『ただいま』って帰ると、飛びついてきて癒しになっています」と笑顔を見せる。
優勝争いにも加わっているが、「そこはあまり考えず、一日一番、集中していきます」と語っていた。しかし、結びで全勝の貴景勝が敗れて、1敗がトップグループに。今後は上位との対戦が組まれるだろうし、面白い存在になってきた。
文=山口亜土
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