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2020-12-17

「第99回全国高校サッカー選手権大会」開幕直前<1> 昌平高校のポジショニング指導:後編

99回目を迎える全国高校サッカー選手権大会。昌平高校は1回戦で高川学園高校と戦う

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攻守一体を意識し、位置どりを考える


 
――昌平は明確なスタイルを持っている印象があります。しかし実際には、型にはめずに、相手を見て、自由な発想でボールを動かし、かつ守備意識を持ちながらゴールを狙いに行くスタイルが、結果的にそう見えるということですね。

藤島 攻撃はもちろん大切にしますが、きちんとした守備が前提にあってこそなのです。攻撃でやりたいことをやるには、距離感を考え、奪われた瞬間にすぐに守備に入れる意識を持たなければいけません。また、距離感と言っても、自分たちだけの距離感ではなく、相手のやり方や配置を見た上での距離感でなければいけません。

――型にははめないが、やるべきことをきちんと理解させ、ゴールという目的を明確に持って、数ある手段をどう発揮させるか、その点にこだわっているのですね。

藤島 攻撃と守備が完全に一体化していないと、サッカーはうまくいきません。ですから、攻撃的なチームとして、ボールを動かすことだけを主にやりたいわけではありません。無理にボールを奪って自分たちで動かすよりも、相手を動かすようにし、そこから奪って攻め切ったほうが良いシチュエーションであるのなら、ボールと相手の動きを見ながら、どこで奪ってゴールに向かうかを考えたほうが良いでしょう。

それに、守備を固める相手に対して崩すことにこだわり過ぎてしまうと、どうしても人数と時間がかかります。人数と時間をかけて攻撃すると、カウンターのリスクが高まります。そのリスクを減らすために、距離感を意識して相手ボールになった瞬間に襲いかかれるようにしなければいけません。

攻守は一体であることを練習から意識させないと、どうしてもぶつ切りになってしまいます。裏を返せば、それを「一つの物語」として考えられない選手は、スタメンで使ってあげることはできません。攻撃と守備で分けて考える選手は、能力があっても、どうしてもジョーカー的な役割になります。ただ、これは私の課題なのですが、そういう選手がピッチにいるとして、その選手が持つスペシャルな能力を全体で活かせるチームにすることも重要だと思います。そこは、これからもっと努力しなければいけない部分だと思います。

――ストーリー性を持たせて落とし込むのは重要な指導力の一つだと思います。

藤島 結局、選手に求めるものは監督によって変わってきますし、良い選手の定義も監督によって違うと思います。ただ、絶対に言えるのは、攻撃も守備もできる選手が良いということです。だからこそ、選手の将来のことを考えて両方の意識レベルをどこまで引き上げられるかが、指導者にとって重要なポイントになります。

トレーニングの中でポゼッションをやることがありますが、そこではボールをしっかり動かすことだけではなく、素早い切り替えも強く求めています。攻撃から守備に切り替わった際の頭の変化をきちんと求めているのです。攻撃が終わったあとに守備が始まるのではなく、攻撃が終わろうとする時点で守備は始まるのです。両者は表裏一体なので、連動性がないと、相手の攻撃をモロに食らってしまいます。

攻撃と守備の両方を常に頭の中に入れてポジションをとらなければいけません。逆に言えば、守備のリスクを考えても攻撃に効果があると思えば、思い切ったポジションをとれます。そこに明確な狙いがあれば、それは良いポジショニングになります。だからこそ、「ここにいなさい」、「こうするべき」とは言わないようにしているのです。選手が描いた物語を指導者が壊してはいけないと思うため、特に注意している点です。



 プロフィール

藤島崇之(ふじしま・たかゆき)

1980年4月12日生まれ、千葉県出身。現役時代は習志野高校で玉田圭司(V・ファーレン長崎)らとともに全国高校サッカー選手権大会(以下、選手権)に出場した。2007年のサッカー部創部と同時に昌平高校の監督に就任。高い技術をベースとした選手に考えさせるスタイルでチームを成長させ、14年度に選手権初出場。16年度から3年連続でインターハイに出場し、16年度と18年度はベスト4に進出。19年度の選手権ではベスト8入りした

サッカークリニック 1月号

取材・構成/安藤隆人

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