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2020-12-28

「第99回全国高校サッカー選手権大会」開幕直前<4> 履正社高校のファーストタッチ指導:後編

12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会。履正社は初戦となる2回戦で新潟県の帝京長岡高校と戦う

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「ゴールを目指す意識があったかどうか」が基準



――ヨーロッパの選手は、ボールが来る前にゴールに向きやすい立ち位置をとっているケースが多いと思います。

平野 体の向きもヨーロッパと日本の大きな違いです。UEFAチャンピオンズリーグの試合を見ていると、ボールを受ける際にゴールに対して背を向けている選手が少ないことに気がつきます。ボールを持った選手はもちろんのこと、それ以外の選手も、攻撃時には前を向いてボールを受ける準備をしています。背を向けた選手であっても、ファーストタッチで相手の背後をとって、ゴールに向かって前進したりします。19-20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグで優勝したバイエルン・ミュンヘン時代のチアゴ・アルカンタラ(20-21シーズンからリバプールFC)がよく見せていたプレーが良い例です。

しかし、日本ではゴールに背を向けた状態でボールを引き出す選手が多く見られます。そうした状況でパスを受けても、前を向くまでに時間がかかって攻撃が遅れます。ボールを受けるために後方に下がらなければいけない状況であっても、バックステップを使えば、ボールが来た瞬間に前方向でファーストタッチができます。最低でも、ボールを受けたあとのプレーを想定して半身の状態でパスを待つべきだと思います。日本人選手の場合、「ゴールを奪いたい」という意識よりも「ボールを失いたくない」という意識のほうが強すぎるために、相手と向き合わずにボールを隠せるうしろ向きになるのかもしれません。

ゴールを奪うためには、ボールを失うリスクも受け入れなければいけません。指導者はファーストタッチでミスしてボールを奪われたことを指摘するのではなく、そこに「ゴールを目指す意識があったかどうか」を基準にした指摘をしてほしいと思います。そうした点から変えていけば、ゴールを奪う意識が高まり、ファーストタッチが良くなると思います。

プロフィール



平野直樹(ひらの・なおき)

1965年11月2日生まれ、三重県出身。四日市中央工業高校、順天堂大学、松下電器でFWとしてプレーした。現役から退いたあと、ガンバ大阪ジュニアコースの監督として、元日本代表のMF稲本潤一(現在はSC相模原)やFW大黒将志(現在は無所属)らを指導。ベガルタ仙台ユースの監督や星稜高校(石川県)のコーチを務めたあと、2003年の創部と同時に履正社高校(大阪府)の監督に就任した。これまでにインターハイに3回、全国高校サッカー選手権大会に2回出場している。日本サッカー協会公認S級ライセンスを保持している

サッカークリニック 11月号

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取材・構成/森田将義

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