12月31日に始まる第99回全国高校サッカー選手権大会。大阪府代表として出場するのが、履正社高校だ。同校を率いるのが平野直樹監督。ガンバ大阪ジュニアユース監督時代に元日本代表の稲本潤一や大黒将志らを指導した平野監督に、ファーストタッチの指導方法について聞いた。
出典:『サッカークリニック』2020年11月号
スピードアップのためのファーストタッチ――ファーストタッチについて、どのような認識を持っていますか?平野 単にボールをコントロールするためのものではなく、シュートやランウイズザボールなどのさまざまなプレーに素早く移行するための橋渡し的な意味合いがあるプレーだと考えます。ファーストタッチによってすべてのプレーが決まると言っても過言ではないため、サッカーで一番大切な要素かもしれません。
良いファーストタッチができなければ、世界基準から取り残されます。世界のサッカーはどんどん変化していきます。以前は守備のプレッシャーがそれほど厳しくなかったので、ボールコントロールにもある程度の余裕が与えられていました。プレーが遅くても問題はそれほどなかったのです。しかし、いまはどのチームも守備の強度が高まり、ボール扱いのミスが許されなくなりました。相手の隙を突くためにプレーのテンポが日増しに速くなっています。良いファーストタッチができなければ、プレースピードについていけなくなるのです。止まった状態だけでなく、動きながらでも攻撃のスピードを落とさないためには、正確なファーストタッチがより重要になってきます。
――プレーのテンポが速まっただけでなく、スペースが狭く限定されるようになってきたことも大きいと思います。平野 試合の局面がコンパクトになってきていることは確かです。狭くなった局面を打開するため、ボールを足元に止めてからドリブルを仕掛けるのではなく、ファーストタッチで相手をかわすプレーも必要になってきました。2019-20シーズンのUEFAチャンピオンズリーグの準々決勝以降の試合では、ワンタッチでラストパスを送っている場面や、味方がゴール前に抜け出せるパスをワンタッチで送る場面が多く見られました。ファーストタッチを単にボールを止める技術として捉えるのではなく、ゴールを目指すため、ボールを奪われないための手段の一つとして捉えるべきです。
今後は育成年代のプレーもさらにスピードアップしていくと予想されるため、ファーストタッチはこれまで以上に意識させるべきだと思っています。
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サッカークリニック 11月号
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