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2021-02-11

【プロレス】秋山準がDDT2・14川崎を前に「勝って、言うことを言う」

DDT2・14川崎のKO-D王座挑戦に意気込む秋山準

 秋山準が、51歳の大勝負に挑む。DDTのビッグマッチ、2・14神奈川・カルッツかわさき大会で遠藤哲哉の保持するKO―D無差別級王座に挑戦。秋山といえば古くからのファンには全日本、NOAHのイメージが強いだろうが、現在の主戦場はサイバーエージェントのグループ会社、株式会社サイバーファイトが運営するDDT。秋山は昨年7月より全日本からDDTにレンタル移籍となり、2020年いっぱいで全日本との契約が終了したことから、いまはフリーという立場だ。

 2014年に古巣の全日本に復帰してからは社長の職に就き、とくに近年の同団体では本人も「団体のバリバリの選手とやっていたわけじゃない」と語るように、一線から引いていた。しかし昨年1月に“いち選手”に戻り、その後、DDTにレギュラー参戦を始めたことがレスラー人生幾度目かの転機となった。

 KO―D無差別V11という同王座連続防衛記録を持つDDTの若きエース、竹下幸之介と連戦を重ね11・3大田区の初一騎打ちで激勝。さらにシングルリーグ戦「D王GRAND PRIX」で優勝決定戦に進出すると、再び対峙した竹下を返り討ちにして2連勝を飾り、51歳にして制覇。DDTの中心選手である竹下に2連勝したことで“いける”と自信を回復させ、いよいよ2・14川崎でシングル王座取りに臨む。

「(いち選手になり)アップデートじゃないけど、自分で体力なり頭のなかであり、全部変えた。体もトレーニングも全部変えてきて、竹下選手とやってある程度の自信ができて、リーグ戦も勝っての今回なので、違うと思いますよ。ここ最近ではない感じだと思いますよ」(秋山)

 秋山が団体の最高峰シングル王座に挑むのは、全日本時代の2016年7月、博多で時の三冠ヘビー級王者・宮原健斗にチャレンジして以来となる。タイトルマッチに向け王者の遠藤とも数試合タッグマッチでの対戦が組まれていたが、年明けに秋山は半月板損傷で状況が悪化していた左ヒザの手術を決断。関節鏡下半月板切除術を受け、1月大会は復帰戦となった1・31板橋を除き、欠場となった。ただ、それもすべては2・14川崎に最高の状態で向かうため。

「正直まだ術後1カ月ぐらいなので、100%どうなのかといったらアレだけど、年末に比べれば全然いい。いまの感じだったら、試合になってアドレナリンが出たら気にならない程度だと思います。もしかしたら、普通に試合をするならそのままでもいけたかもしれないけど、最高峰の試合をするにはこの足じゃダメだから手術して治した。足が使えない時は上半身のトレーニングはしてたし、最高峰のベルトに行く気持ちのテンション、練習はやってきたつもり。いつもだったらもっと坂道ダッシュをしたり走ったりするけど、それはできなかった。違うのはそれぐらいで、あとは気持ちも何もすべて同じように、GHC取った時もそうだし、三冠取った時もそうだし、今回のKO―Dに挑むにあたり、同じようにやってきた。練習方法も年齢によって変わってるけど、気持ちの面で何か違うかといったら、それは何も違わない。まったく同じです。若い頃より経験もしてるし、経験からくる余裕はある。昔だったらもっと緊張もして当日のことも考えてただろうけど、そこは平常心でいられる」

 秋山の欠場中は王者の遠藤が「俺はケガ人のリハビリに付き合うつもりはねえ」など挑戦者に対する挑発を続けた。復帰直前も世代の違う29歳の王者から「1から10まで査定してやる」と言われたが、いざ迎えた1・31板橋の復帰戦ではグラウンドで制圧し、ナイフをギラリと見せつけアームロックを決める場面があった。「もうちょっと対処しないと決まりますよ。見せつけた? まあ彼が一番わかるんじゃないですか」と冷静に語り、数々の挑発も「これぐらいやらないと駄目だといろんなところで言っていたから、よく頑張った」と笑顔を見せたが、2・14川崎に向けてはキッパリとこう予告。

「いまは解放されまくってますね。社長の時はそんなに怖くなかったと思うけど、いまはたぶんメッチャ怖いですよ。社長の時は“これはやっちゃいけない”“これをやったらコイツは選手として死んじゃうな”“試合中もこれをやったら(相手の価値が)落ちちゃうな”とかがあったけど、いまはそれがない。もともとギラつきは持ち合わせてるけど、そういうのはあった。いまはみんなお坊っちゃんばかりのいい子だから、ギュッとしようと思ったら簡単。いまはギュッといこうと思ったら、いつでもギュッといけるから。前よりは(怖さが)出やすい環境にある」

 不敵に予告した秋山は「キラー? そんな大したアレじゃないですよ」と言いながらも「みなさんが思い描いているものが、14日は見せられる。もっと言えば12日のNOAH日本武道館(丸藤正道と組み、清宮海斗&稲村愛輝と対戦)でも見せられる。12日のNOAHで燃え上がらせて、そのまま14日に行くイメージができてますから。遠藤君は(清宮&稲村より)だいぶ先輩だけど、俺にとっちゃみんな若人(わこうど)。同じような感じでいく。みなさんが思うような怖い人が、14日もいると思います。見たいでしょ?」と話し、ニヤリ。

 90年代から全日本でジャイアント馬場さんに学び、三沢光晴さんや、14日には立会人で来場する小橋建太さんらと激闘を重ねてきた秋山。NOAHではGHCヘビーを巻き、出戻った全日本で三冠ヘビー初戴冠というドラマもあった。そして年齢とともに一線を引いた時期もありながら、いま再び場所は変われどDDTで頂点に最接近――いつかの秋山に熱狂していた多くのファンの中には、時とともにプロレスを見なくなった人もいるだろう。そうした人たちの琴線に触れるであろう言葉を、かつて超新星と呼ばれた男は口にする。

「たぶん遠藤君は『二度と秋山さんとやりたくない』と思うはず。そのうちみんな俺とやるのが嫌になって相手がいなくなる(苦笑)。でも、プロレスは闘いですから。それで遠藤君が『クソ…』と思えばいいし、もし俺が負けるなら、それは彼の怒りが俺をまさった時だと思う。でも、12日があって14日にいって…いいイメージしかないんですよ。勝って、ベルトを巻いて、言うことを言う。そこまでのイメージができてるので、イメージ通りにいきたい。14日はみなさんが望むような秋山準がいると思うので、ぜひ見に来てください。同じ世代でプロレスをちょっと離れてしまったミドル世代のみなさん、14日、カルッツかわさきに集合!」

 竹下もそうだったが、秋山にとっては遠藤も世代が大きく違い、類まれな運動神経で立体的なプロレスを展開するファイトスタイルも異なる選手。昨年11・22後楽園のD王GP公式戦では遠藤のシューティングスター・プレスで3カウントを奪われ、敗れてもいる。ただ、そこから秋山はリーグ戦優勝、左ヒザも治療しての今回。自信に満ちた言葉の数々は、段階を踏んできた証明でもある。

「ベルトを巻いて、言うことは言う」と謎かけを残した秋山。いまはコロナ禍ゆえ会場で歓声を送れる状況にはないものの、どのような結果が出ようと、現在だけではなくかつて熱狂した人々の“心”を熱くさせる準備は万端だ。全日本でもNOAHでもない、DDTで再びプロレス界の最前線に浮上せんとする51歳の覚悟を、ぜひ多くの人に見届けてほしい。

<週刊プロレス・奈良知之>
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