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2021-03-19

【第93回センバツ出場校の指導法】健大高崎 Part2 バットを早くラインに入れることで加速距離を延ばし確率を上げる

関東大会決勝の常総学院戦では6打数5安打で9回の同点打を含む2打点を記録した健大高崎の櫻井歩夢

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 健大高崎の特徴は、外部コーチを含めて10人のスタッフが指導を行う体制にある。Part2では打撃指導の中心となる生方啓介部長の理論を紹介する。


生方啓介〈健大高崎高部長〉
うぶかた・けいすけ/1981年6月17日生まれ。群馬県出身。沼田高-東北福祉大。2005年より健大高崎高部長を務める。社会科教論。


 かつては攻撃のメーンに機動力を置いていましたので、走力ありきでバッティングを考えていた面がありました。要はミート率重視です。野手の間を抜くような打球を良しとしていました。現在はその序列が入れ替わり、機動力はバッティングを生かすものという位置付けです。走力でプレッシャーをかけてピッチャーの甘い球を引き出し、そのボールをしっかりと打つ。しかも、それが長打になるような力を身につけるために、バッティングの技術から体の使い方を根本から見直し、練習メニューも組み立て直しました。

 強い打球を打つために、バットがボールにどのような状態で当たればいいかを考えると、ヘッドが十分に加速されてからインパクトを迎えるのが理想です。また、飛距離を伸ばすためにボールの中心のやや下側にバットヘッドを入れるようにしてスピンを多くかけ滞空時間が長い打球を打つことを目指しています。

 以前はボールを上から押さえつけるようなとらえ方をするバッティングをしていましたので、ヘッドが走る前にインパクトを迎えていましたし、ボールをとらえる位置も中心より上側になっていました。求める技術が変わったため、体の使い方から変えていく必要がありました。


主将の小澤周平は1年時からホームランを量産する

 ただし、技術的に型にはめるのではなく、その選手にとって最も力を出しやすい体の使い方を見極めることをスタッフ間でも大切にしています。構え方、タイミングの取り方、ボールのとらえ方も選手それぞれで固定的なものはありません。チェックポイントはいくつもありますが、それが合わない選手にまで、それを押し付けることはせず、その選手なりの体の使い方を考えていきます。そうする中で変わるポイントが出てきますので、それを感じながら選手とかかわるようにしています。

「すべての球を打ちにいきながらも低めの見極め」を徹底するために、打つポイントは体の中に置くことが基本です。そして、そのポイントまでにバットヘッドを十分に加速させるために、言葉にすれば「後ろの大きい」スイングをします。インパクトまでの加速距離を延ばすためです。

 言い換えれば、バットヘッドを捕手寄りの位置で投球軌道に入れていくスイングとなります。それは「見極め」のために重要なポイントです。早い段階でバットを投球のラインに入れることで、インパクトまでの加速距離が取れ、とらえる確率も上がります。逆に投球を上からたたきつけるようなスイングでは、バットがラインに入らず確率が低下しますし、スイングスピードが遅い状態でとらえることになるので投球に押し負けてしまうことにもなります。


①テイクバック時には軸足のアウトエッジ(薬指からカカトを結ぶライン)がズレないように立ち、股関節を外旋させることで捻転をつくりつつ、股関節と骨盤をアジャストさせてバランスを取り、軸脚のヒザの位置を変えないように並進運動を進める。このとき、ステップ脚側の股関節は内旋した状態で割れをつくる
②ステップ脚の股関節を外旋させてステップ。割れの状態からバットを引き出す際、トップハンドのヒジを骨盤の真上につけるようにして骨盤の動きとリンクさせて上体を回旋させることで強くインパクトできる

 そのようなスイングをするために大きなポイントとして伝えているのが股関節と骨盤の使い方です。

 そのためには、足の裏の使い方が重要で、テイクバック時には軸足の母指球に過剰に体重を乗せて立つのではなく、アウトエッジ(薬指からカカトを結ぶライン)を上手に使い立つようにします。そのとき、アウトエッジで地面をしっかりととらえた状態で股関節を外旋(つま先を外側に開く動き)すると、足が固定されているためステップ脚側の臀部が投手側を向くように捻転ができ、股関節と骨盤がアジャストした状態で、軸脚でバランス良く立つことができます。この股関節と骨盤の状態が崩れては、体の中のポイントで強くとらえるスイングはできません。

 また、このとき母指球に体重をかけ過ぎて立つとヒザが内側に入りやすく、それではバランスを崩して並進運動から回転運動にスムーズにつなげられません。重心が軸脚に乗ったときに、良いバッターは体勢がぶれずに割りに入っていくことができます。

 そして、バットを投球のラインに入れていく際には、トップハンド(右打者の右手)側のヒジが軸脚の骨盤の真上あたりに入ってきて骨盤の回転でボールをとらえるイメージで体幹を回旋させていきます。そこで手だけが先行するとスイングスピードは十分に上がりません。並進運動からステップが着いて以降は、重心が軸脚からステップ脚側に移動する不安定な局面になるため、そのときに骨盤とトップハンドのヒジの動きがかみ合いながら体幹が回旋することで力強くインパクトすることができるのです。

 また、この重心が安定から不安定になる局面で「バランス」が崩れてはスムーズに回転運動を行うことができません。それをチェックするために注視するのが耳の位置です。トップを入れ過ぎて耳が肩のラインから外れていたり、並進運動中に耳の位置が動いたりしては、バランスが崩れ、スイング自体もぶれてしまいます。



     打撃基礎トレーニング     
オーバーヘッドスクワット
シャフトを肩に担ぎ、腕を伸ばして手を頭上で組み、タオルなどをヒザで挟んで内転筋を絞り込んだ状態でスクワットを行う。骨盤を前傾させながら太ももが地面と平行になるまで腰を落としていく。胸郭の柔軟性で胸を張って顔を上げる。足首-ヒザ関節-股関節を連動させたトリプルエクステンションを利用して立ち上がる。タオルをヒザに挟むのは、骨盤の動きを強調するためと、しゃがんだ状態でヒザが割れないようにするため。また、カカトを浮かせずに行うことで腰椎のストレッチを効かせられる。

Part1はこちらから

Part3に続く

【ベースボールクリニック2021年3月号掲載】

写真◎BBM

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