髙安(押し出し)北勝富士13時半から鶴竜の引退会見が行われ、涙はなく笑顔での会見となった。もう一度、土俵に立ちたい気持ちは強かったものの、ケガの治りが遅く、「もう無理だ」と納得しての引退となった。「今は解放されてホッとしている」と精神的にもきつかったようだ。今後は現役名で年寄となり、後進の指導にあたる。
土俵に目を向けると、優勝争いのトップを走る髙安は北勝富士と対戦。対戦成績も7勝7敗の五分で、前日は緊張のためかいいところなく敗れているだけに心配されたが、この日はいつもの髙安に戻っていた。
髙安は右足から踏み込み、胸から当たって右からおっつける立ち合い。左で突きながら右おっつけで北勝富士を横に向かせると、追い足鋭く土俵際に追いつめ一気に押し出した。これで単独トップを守り、10勝目を挙げた。
「立ち合いがよくしっかり攻められた。昨日の相撲を反省して今日に生かすことができた」と、前日の立ち合いの失敗を繰り返さなかった。
三役での二ケタ勝利は大関だった平成31年3月以来、2年ぶりになる。「久しぶりの三役での二ケタですけど、これで終わりじゃないので、気を引き締めていきたい」と語る。
優勝争いについては、「なるようにしかならないので、精いっぱいやりたい。いい緊張感でやりたい」と開き直っているようだ。大関時代にもつかめなかった初優勝まであと3勝。
「数年前の大関のころと比べても、それ以上によくなっている。できることは何でもやって力を出し切りたい」と力強いコメント。
優勝争いを整理すると、2敗に髙安、3敗に朝乃山と照ノ富士の2人で、この3人に絞られたと言っていいだろう。髙安はすでに役力士との対戦を終えていて、今後対戦する相手は格下ばかり。13日目は2枚目の若隆景だ。朝乃山と照ノ富士は直接対決も控えていて、相手は上位ばかりとなる。
高安が断然有利であるが、勝負事は下駄を履くまでわからない。どんな結末が待っているのか。髙安が言うように「なるようにしかならない」のだろう。
文=山口亜土