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2021-03-24

【相撲編集部が選ぶ春場所11日目の一番】髙安、単独トップは変わらずもその差は1に

後続に2差をつけて単独トップに立った髙安だが、緊張からか動きが硬く正代の突き落としに転がされた

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正代(突き落とし)髙安

11日目の午後、横綱鶴竜の引退が発表された。3月に進退を懸けて土俵に上がるつもりだったが、直前にケガをして休場。もう一度、土俵に上がりたかっただろうが、もはや体は限界だった。12日目の13時半から引退会見が行われることになり、この様子はYou Tubeで生配信されることになった。

優勝争いで2差をつけて単独トップの髙安は大関正代と対戦。過去の対戦は髙安の8勝11敗も、最近は7連敗と苦手にしている相手。ただ、今場所の正代はここまで5勝5敗と星が上がらず、相撲内容も悪い。今回は髙安に分があるだろうと思っていた。

しかし、土俵に上がった髙安は明らかに動きが硬い。もともとプレッシャーに強いほうではなく、2差に開いたことで優勝を強烈に意識してしまったのか、緊張の色がありあり。時間いっぱいになってもなかなか手がつけず、迷っている様子だった。

ようやく立ち上がると、いつもの当たりの強さがなく、あっさりと正代に左を差されてしまう。右も差されてモロ差しを許し、左を巻き替えたところを右から突き落とされて土俵に転がった。

白星を先行させた正代は、「圧力をかける立ち合いを考えていた。立ち合いから左が入ったし、勢いを相手に伝えることができた。踏み込んでいたので、残りの相撲にもいい影響になるんじゃないか」と上機嫌。

同じ時津風一門の横綱の引退については、「入門したときから気にかけてもらっていた。何度も胸を借りたし、とても残念です。腰の高さとか、当たるときの頭の角度など教えてもらった。教えてもらったことを生かしていきたい」としんみり。

本場所では一度も勝つことができず、稽古場でも正代が鶴竜に勝った姿を見たことがない。相撲巧者の横綱にいいように取られて手も足も出なかったが、「一番も勝つことができずに引退されてしまった。最後に一番取りたかったなあ。自分が大関に上がってから交流がないので、看板力士としての心得を教えてほしかった」と語る。

たしかに正代には大関としての自覚が足りないと感じる。貴景勝や朝乃山のように負けたときの悲壮感がない。負けても飄々として、「勝ち越せるかなあ、勝ち越せるといいなあ」などと言っている。まあ、そこが正代の魅力でもあるのだろう。

文=山口亜土

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