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2021-03-26

【ボクシング】遅れてきたスーパーホープ、27歳の藤田健児がTKOでプロデビュー飾る

アマチュア10冠の藤田(左)は、やや時間がかかったが、最後はストップ勝ち(写真/馬場高志)

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 アマチュア10冠の戦歴を持つ藤田健児(帝拳)は25日、東京・後楽園ホールのフェザー級6回戦でプロデビュー戦を行い、木村元祐(JM加古川)に6ラウンド2分38秒TKO勝ちした。やや勝ち味は遅かったが、スケール感のある戦いに、次戦以降の期待は高まった。

 自己採点は「60点」。元2階級制覇世界チャンピオン、粟生隆寛トレーナーは「50点」。「テンポよく攻撃しなければいけなかった」、「もっと早く詰めないと」。藤田が減点材料に上げたこの2点。本人が一番にわかっている。それでも、今後の活躍が大きく予感される戦いでもあったのだ。

 対戦する木村は10戦3勝ながらも、かなりの曲者。長い間合いを使い、スローペースからいきなり奇襲のパンチを仕掛ける。サウスポーに転じたりもする。勝つことはできても、「いい試合」にするのはとても難しい、藤田はアマチュアで174戦(153勝)もしているが、こういう選手はかつていなかったはず。ここまで五輪を追いかけて、27歳になってからのプロ転向なら、最初から周囲の評価をヒートアップさせたい。でも、失敗は決して許されない。難題ばかりの初陣にいくぶんの慎重さを帯びたとしても仕方なかった。

 藤田は右ジャブ、左ストレートと単発ながらも好打を重ね、立ち上がりからペースを握った。距離が縮まると、木村はねちっこくしがみついてくるのだが、これも体さばきで軽くいなす。最初の3ラウンドで、木村は戦いの手立てのあらかたを失っていた。

 4ラウンド、藤田は左ストレートからチャンスを作り、右フックのボディブローでダウンを奪う。その後の木村は、藤田の攻勢にさらされると、上体を深く折り曲げてしのぐのが精いっぱい。5ラウンドが終わると、試合終了と勘違いして藤田側の赤コーナーに挨拶に行くほど消耗していた。6ラウンドも藤田は慌てない。左目下を腫らした木村をじっくりと追い詰め、最後は右アッパーを決めたところでレフェリーストップがかかった。

「考えていた戦いはできましたが。最後はレフェリー頼りでしたね」

 本人の弁のとおり、もっとアグレッシブに戦ってほしかったが、クールな読み、体の強さ、パワーはこの試合からも十分に読み取れた。兄・大和。姉・翔子は総合格闘家で、『格闘技一家の最終兵器』と呼ばれる。本人も中学生まではキックボクシング、総合格闘技を7年前に急死した父・和彦さんからみっちりと仕込まれた。「うちはボクシングで世界を目指してきた一家なので、まずはいいスタートを切れたかなという感じです」。次回はもっと派手なパフォーマンスで、高い望みへのしっかりとした道筋を確かめたい。

 メインイベントのスーパーライト級8回戦では、アマチュア時代に日本記録の62連勝をマークしている長身サウスポー、李健太(帝拳)がプロ4戦目を行い、勇敢な石脇麻生(寝屋川石田)に手こずりながらも、正確な左ストレートを集めて判定勝ちしている。李は4戦3勝(1KO)1分

文◎宮崎正博

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