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2021-04-27

【陸上】男女2000m障害で日本最高記録。無観客のなか山中柚乃が見せた「負けたくない気持ち」

兵庫リレーカーニバル女子2000m障害で、山中は6分19秒55の日本最高記録をマーク(撮影/毛受亮介・陸上競技マガジン)

長距離が看板種目となってきた兵庫リレーカーニバルで、今年は新しく始められた男女の2000m障害で日本最高記録が誕生した。女子は山中柚乃(愛媛銀行)が6分19秒55と、藪田裕衣(大塚製薬)が2019年にマークした6分27秒74を更新。男子は阪口竜平(SGホールディングス)が5分29秒89と、楠康成(阿見AC)が19年に出した5分31秒82を更新した。行われることが少ない種目だが、4月29日の織田記念で行われる3000m障害への期待は間違いなく高まった。

急成長中の山中
織田記念で「確実に優勝」を狙う

 日本最高記録で優勝した山中は、場内インタビューで「負けたくない気持ちと、無観客開催になって応援に来られなくなった家族に、画面越しに良い走りを見せたかったから」とコメント。出身地の大阪に近い場所での開催に、モチベーションが高まっていた。

 いつもと異なる距離だったが、「練習でも中距離寄りのスピードを行ってきたことで対応できた」という。また各種目で風が選手たちを苦しめた大会だったが、「私は後傾気味のフォームなので、風で前傾を意識すると動きが良くなるんです」と、こちらもストレスなく対応した。

 残り340m付近でスパートして逃げ切った山中だが、ラストがしっかり走れるのは「5回に1回くらい」と謙遜気味に話す。「積極的なレース運びは自分の持ち味ですが、ラストはペースダウンすることが多いんです」


3000m障害日本歴代7位を自己記録を持つ山中(撮影/毛受亮介・陸上競技マガジン)

 4日後の織田記念は3000m障害に出場する。兵庫の2000m障害では風が強い中でも1000m毎3分10秒ペースで走り切ったが、「(風が弱い条件でも)そのまま3000mまで行けるかといえば、それはできないと思います」と隠さず話す。日本記録(9分33秒93)への挑戦は、もう少し先になりそうだが、昨年の日本選手権で逃した優勝への意欲は相当に強い。

「織田記念はランクの高い試合なので、確実に優勝したいと思っています」

 5回に1回のラストの走りを、2回連続で出せれば課題を克服したことになる。

阪口は織田記念で
五輪標準記録突破が濃厚

 阪口もスパートしたのは残り340m付近と、女子の山中と同じ地点だった。第3コーナーまでに2位を8~9mは引き離す圧倒的なスパート力で、フィニッシュでは2位の塩尻和也(富士通)に5秒28の大差をつけた。

「風も強かったので1000mで一度下がって自分のリズムをつくって、ラスト勝負でしっかり自分の力を出せました」

 昨シーズンは試合数が限られ、3000m障害は日本選手権1試合だけの出場で7位。シーズンベストも8分48秒30と振るわなかった。その間に学生の三浦龍司(順大2年)が8分19秒37の日本歴代2位で走り、山口浩勢(愛三工業)は日本選手権に優勝し、記録も8分24~25秒台が3回と安定していた。

 だが阪口も19年の日本選手権優勝者で、8分29秒85の学生歴代5位を持つ。記録的な目標は「日本記録(8分18秒93)」だけでなく、8分10秒も高い目標とは思っていません」と設定している。オリンピックに「戦うために出場する」という強烈な意思が、高い目標タイムを当たり前にしている。

「海外のレースの動画を見ると、スローの展開でもラスト1000mを2分40秒を切って、2分38秒とかで上がれば入賞は目指せます」と、やるべきことが具体的にイメージできている。

 練習では1500mなどで速いスピードで行うメニューで、「苦しいなかでも体を動かす」ことをしていきたいという。「走力も技術もスピードも、課題を1つずつクリアしていけばタイムは上がります」


男子2000mSCで5分29秒89の日本最高記録を樹立した阪口(撮影/毛受亮介・陸上競技マガジン)

 山中と同様、4日後の織田記念3000m障害に出場する。

「中3日ですが、自分は連戦の方が走れるタイプです。今日よりももっと良い走りができると思います」

 この日見せた圧倒的なスパート力と、自信に満ちた言葉の数々。阪口が五輪標準記録の8分22秒00を突破する日は近い。

文/寺田辰朗

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