御嶽海(押し倒し)貴景勝初日は4大関がそろって白星を挙げ、今場所は4大関による優勝争いで盛り上がるかと期待してしまったが、2日目は3大関に土がついた。勝ったのは復帰した照ノ富士だけ。要するに大関から平幕上位まで力の差がそれほどないということ。
貴景勝や正代は初日の相撲を見る限り、調子はいいと思われたが、それぞれ御嶽海、若隆景の難敵相手に屈してしまった。2日目は優勝を占う一番と見ていた御嶽海と貴景勝の相撲を取り上げたい。
これまで対戦成績は貴景勝の10勝9敗。御嶽海には優勝決定戦での勝利もあるので完全に互角だ。優勝2回も互角。御嶽海の場合、他の大関陣に対しても互角以上の成績を残しているので、何でいまだに小結にいるのかが不思議だ。
立ち合い、頭から当たった両者。無観客で静かなだけに鈍い音が響く。先に攻め込んだのは貴景勝だった。突っ張りで前に出たが、御嶽海は下からあてがって押し返す。御嶽海が叩きにいったところを貴景勝が一気に出るも、土俵際で御嶽海が右を差して盛り返し、再び土俵中央へ。ここで御嶽海が下から押し上げて前進。この圧力に貴景勝は我慢できず引いてしまい、土俵下に転げ落ちた。
「途中で引いたけど、また前に持っていけたのでよかったです。体も動いています」と勝った御嶽海。大熱戦だけにお客さんが入っていたら、大いに沸いたのだろうが、「無観客ですけど、テレビの前で見ている人には、御嶽海らしい相撲を見せることができたと思う」と胸を張った。
何度も頭から当たり合ったので、御嶽海の右目上は皮がむけるような擦り傷になっていた。顔の傷には苦い思い出がある御嶽海だが、「これくらいなら大丈夫。大関とやるといつもこうなるので、傷は勲章だと思って頑張ります」と力強い。
前日の母の日には大量のカーネーションを贈ったそうだ。「自撮りした写真がいっぱい送られてきました」と笑顔で話す御嶽海。コロナ禍で最近は帰省もできていないそうだが、明るいお母さんで有名なマルガリータさんを相撲の成績で喜ばせたい。
文=山口亜土