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2021-05-29

“プロレスの神様”カール・ゴッチが語る宮本武蔵の五輪書「最も必要なものは兵法を身につけること」

1986年のカール・ゴッチ

“プロレスの神様”と言われるカール・ゴッチは日本を代表する剣術使い・宮本武蔵の著書「五輪書」を愛読していた。「五輪書」は海外でも訳本が多数出版されており、アメリカやフランスではベストセラーにもなっている。

 その「五輪書」をゴッチは自宅の書棚に置き、いつでも取り出せるようにしていた。ゴッチは言う。

「私が本格的にレスリングを始めたのは13歳の時。力に自信があったので、最初の頃はパワーだけで相手を押しまくるようなレスリングをやっていた。しかし、力を振るうだけでは、そう簡単に勝たせてもらえないことに気がついた。

 最も必要なものは、洗練されたストラテジーを身につけることだと知ったのだ。ストラテジーとは、武蔵の言う“兵法”のことである。もちろん、力があるにこしたことはない。だが、力だけに頼ろうとすることは、所詮、粗削りな、小手先の術にすぎない。

 そのことを知るまでの私は若すぎた。自分の力におごっていた。それがレスリングと巡り合い、持っている力を有効に生かすためには、日々のトレーニング(Training)が必要なんだと知った。つまり、努力である。

 基本から応用に至るまでのテクニック(Technic)が必要なことも知った。さらに、動物的な戦術眼とも言えるタクティクス(Tactic)を身につけることによって、鋭い光しか放てなかった石も、珠のように輝かせることができるということも知った。兵法(ストラテジー)とは、これから3つの“T”の集合体である。

 完成度の高い3Tが集まった時に、初めて自分流のカラーが出せるのではないだろうか。剣術やレスリングにもまったく同じことが言えよう」

 これは「五輪書」内「地の巻」の一部についてゴッチが語った見解である。ものすごく一端ではあるが、ゴッチがなぜ“プロレスの神様”と言われているのか、その由縁が垣間見えるだろう。

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