阿炎(寄り切り)大翔丸7日目を終え、幕内の優勝戦線は前日と変わらず。照ノ富士はうるさい琴恵光をガッチリつかまえ、白鵬は翔猿の奇策にも落ち着いて対処して全勝をキープ。琴ノ若も1敗を守った。
十両では阿炎がただ1人全勝。新型コロナウイルスの感染対策のガイドライン違反で3場所謹慎休場となり、幕下下位から3月に復帰して、連続幕下全勝優勝。今場所、1年ぶりに関取として土俵に上がっている。
この日の対戦相手は大翔丸。阿炎は立ち合いのモロ手突きから左に動き、そこを大翔丸に付け入られ右を差されて攻め込まれるが、左上手を取って回り込みながら上手投げ。さらに上手投げを連発して泳がせ、右はノド輪押しで上体を起こして寄り切った。
「体が自然と動いてくれたのでよかった」と阿炎の第一声。攻め込まれたが、「集中していたので対応できた。最後はチャンスと思って、ここしかないと出ました」と振り返った。
3月に戻ってきたときに、相撲が取れる喜びを語っていた阿炎。そのときもしっかり稽古して体をつくってきていたが、4カ月経ってさらに体が大きくなった印象だ。1年前よりも胸板は厚くなり、太股も太くなっている。心を入れ替えて、日々精進しているようだ。
謹慎前は明るくおしゃべりでお調子者の阿炎だったが、今は真摯に取材に対応し、言葉を選びながら真面目に答えている。人間的にも大きく成長した。1年ぶりとなる関取の土俵で締め込みも新調した。色は黒。理由を聞かれると、「初心を忘れないように」と答えた。入門した新弟子は黒い稽古廻しを与えられる。本場所の取組もこの廻しで取る。木綿と絹の違いはあるが、黒い締め込みが新弟子の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれる。
これで無傷の7連勝。復帰した3月からは21連勝となった。「連勝は意識していません。考えないようにしている。一日一番、全力でいきます」。元三役の力は十両でも抜けている。十両優勝は阿炎で堅いだろう。東十両14枚目の地位だが、全勝優勝なら1場所で十両を通過し、幕内返り咲きの可能性もある。
文=山口亜土